教育福島0026号(1977年(S52)11月)-037page

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やさしい教育法令の解説

 

公務災害補償について

 

一、公務災害補償の意義

公務災害補償とは、公務員の職務遂行中の災害(負傷、疾病、廃疾又は死亡)、又は勤務のため住居と勤務場所との往復途上において発生した災害に対し、本人又はその遺族がこれによって受ける損害を補償する制度であり、民法や国家賠償法による損害賠償と異なり、使用者の過失の有無を問わないこと、物的損害や慰謝料は含まれず身体的損害に限られること、補償金額は原則として、災害を受けた者の給与を基礎として計算した定額とされていること等の点において、特殊な性格を有しており、被害者及びその遺族の生活保障を目的とした、社会保障制度としての性格をあわせもつ特殊な制度です。

 

二、手続きと不服申し立て

公務上又は通勤による災害が発生した場合には、被災した本人又は遺族は地方公務員災害補償基金に対し、補償の請求を行い、基金は被災者の任命権者の意見を聞いて、その災害が公務により又は通勤により生じたものであるかどうかの認定を行い、その結果を請求者及び被災者の任命権者に通知することになっています。

この決定に不服のある場合には、基金審査会に対して審査請求をすることができることになっています。

 

三、公務災害の認定

災害が公務上のものかどうかの判断基準は、その災害が使用者の管理下にある状態において生じたものであるかどうか(公務遂行性)、及び公務と相当因果関係にあるかどうか(公務起因性)の二つがあります。

公務遂行性とは公務に従事している場合はもちろん、例えば休憩中とか、出張途上などのように、直接公務に従事していなくとも公務遂行性があるとされます。また、クラブ活動指導中、家庭訪問実施計画に基づく家庭訪問途上及び補導に基づくえん恨によって受けた負傷は公務災害と認められます。

公務起因性とは、例えば校内マラソン大会の指導中、公道上で無免許運転の車にはねられて負傷し、長時間の療養をしなければならなくなったような場合には、マラソン大会の指導を行わなければ事故にあわなかったであろうという意味で、相当因果関係があると認められる場合です。

災害が公務に起因するか否かについて最も問題とされるケースは、脳出血あるいは心臓疾患などの循環器系疾病の場合です。一般的には公務に由来する刺激が発病の主原因であった場合、あるいは発病前に継続した勤務のため疲労が蓄積されていた事情が顕著に認められる場合などは、公務災害を認められることがあります。

 

四、通勤災害の認定

通勤途上の災害は、使用者の管理下にあるかどうか、したがって公務遂行性があるかどうかについての問題があり、従来は緊急用務のためただちに勤務することを命ぜられた場合における事故についてのみ、公務災害として認められていましたが、最近の通勤途上の災害発生状況及び通勤と公務の関連性にかんがみ、昭和四十八年より、補償の対象とするように改められました。

通勤の範囲については「教職員の服務及び勤務」二二一ページを参照してください。

 

五、補償の種類

公務災害の補償には次の六種類があります。

(一)療養補償 公務上又は通勤の災害により負傷し、又は疾病にかかった場合においては、必要な療養が行われ、又は必要な療養の費用が支給される。

(二)休業補償 公務上又は通勤の災害により、療養のため勤務することができない期間について、平均給与額の百分の六十が支給される。なお、本県では、条例上給与を支給しているので休業補償を支給することはない。

(三)傷病補償年金 公務上又は通勤の災害により負傷し又は疾病にかかり、療養の開始後一年六か月を経てもなおらず、その廃疾程度が規則で定める廃疾等級に該当する場合には、その状態が続いている間、その程度に応じ支給される。

(四)障害補償 公務上又は通勤による災害による傷病がなおったとき、身体に障害が存する場合には、その障害の程度に応じて、障害補償年金または障害一時金が支給される。

(五)遺族補償 公務上又は通勤による災害により死亡した場合には、その遺族に対して支給されるもので、遺族補償年金及び遺族補償一時金がある。

(六)葬祭補償 公務上又は通勤により死亡した場合、その葬祭を行う者に対して、平均給与額の六〇日分が支給される。

 

 

 


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