教育福島0028号(1978年(S53)01月)-035page

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やさしい教育法令の解説

 

致不服申し立て制度について

 

一、意義

教員が、県教育委員会により戒告や減給等の不利益な処分を受けた場合、当該教員は、その処分が違法あるいは不当であることを主張して、人事委員会や公平委員会に対し不服を申し立てることができます。この制度が不服申し立て制度といわれるものです。地公法がこのような制度を設けたのは、分限処分や懲戒処分が一定の事由に基づき公正に行われなければならないことと表裏の関係を成すものであり、その意味で近代的な公務員関係のあり方を示したものといえます。このように不利益な処分に対する不服申し立ての制度は、不利益処分が適法かつ妥当なものであるかどうかを審査するために設けられた事後審査制度です。

 

二、不服申し立て制度のしくみ

(1) 申し立て権者

地公法の定める不服申し立ては、同法第四九条に規定する懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を受けた職員に限ってできます。しかし条件付き採用期間中の職員や臨時的任用の職員は除外されています。また、単純労務職員も不服申し立てをすることはできません。

(以上地公法第四九条の二、第二九条の二、地公企法第三九条、地公労法附則第四項及び行政不服審査法参照。)

(2) 不服申し立ての対象

不服申し立ての対象となる処分は、「懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分。」です。どういったものが不利益処分にあたるかですが、分限処分たる免職、降任、休職、降給や懲戒処分たる免職、停職、減給、戒告は一般的には不利益処分に該当します。

その他の処分で不利益処分にあたるかどうかは個々具体的に判断することになります。行政実例等のうち不利益処分とされないものをあげれば次のとおりです。

1) 定期昇給が行われなかった場合においても、具体的な処分があったのではないので、不利益処分の審査の対象とはならない。(昭二九・七・一九自丁公発第一二二号)

2) 訓告は、職員が職務上の義務に違反した場合に、これに対して指揮監督の権限を有する上司が当該職員の職務遂行の改善向上に資するために行う事実上の行為であるので処分には該当せずかつ、懲戒処分のように、職務上又は経済上の利益をそこなうものではないので不利益処分ではない。(各県人事委員会判定参照。)

3) 校長の命じた分校勤務は不利益処分とはならない。(昭三七・二・八委初第一三三号。)

(3) 不服申し立て期間

不服申し立ては、処分があったことを知った日の翌日から起算して六十日以内にしなければならず、処分があったことを知らなかった場合でも、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したときはすることができません。

なお、この期間を経過した後は、理由のいかんを問わず不服申し立てをすることができないと解されています。

(4) 審査機関

職員の不服申し立てについて審査する機関は、当該職員の属する地方公共団体の人事委員会又は公平委員会です。なお、いわゆる県費負担教職員については地教行令第七条により任命権者の属する人事委員会が審査を行います。

審査の方法には、書面審理と口頭審理がありますが、処分を受けた職員から請求があったときは口頭審理を行わなければならず、また公開を請求することもできます。

(5) 判定

審査機関は、不服申し立て事案の審査を終了したときは、その結果に基づき判定を行います。判定の態様としては、「処分の承認」、「処分の修正」、「処分の取り消し」の三種があります。

処分の承認とは、任命権者の処分が適法かつ妥当であると認めるもので、結果的には不服申し立て人の主張は認められなかったことになります。

処分の修正とは、任命権者が処分を行ったことに理由はあるが、処分の量定が不当であると判断された場合になされる判定です。

処分の取り消しとは、任命権者の処分を違法又は不当であるとして取り消す判定であり、不服申し立て人の主張が認められたことになります。

 

三、不服申し立てと訴訟との関係

職員が不服申し立てのできる処分について、裁判所に、その処分の取り消しの訴えをするためには原則として、不服申し立てに対する判定を経なければなりません。ただし、申し立てがあった日から三か月を経過しても判定がない等一定の場合には直ちに訴えを起こすことができます。(行訴法第八条参照。)

(注)

地公法=地方公務員法

地公企法=地方公営企業法

地公労法=地方公営企業労働関係法

行訴法=行政事件訴訟法

 

 

 


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