教育福島0031号(1978年(S53)06月)-005page

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巻頭言

 

高校教育の教師諸氏に期待する

 

高校教育の教師諸氏に期待する

福島県後期中等教育審議会会長 油井賢太郎

 

私と教育界との関係は、小・中学校のPTA会長を勤めた程度のものでしたが、終戦直後参議院議員となりましてから荒廃から立ち直るには教育の振興が最も重要な課題であると考えまして、教員の大会等には努めて出席し「教師は聖職であり、その身分の保証は政治家が責任を持つべきである」との意見を強調し、お役に立つべく努力を重ねたものでした。最近は教員の集会といえば保守系の人々は顔も出せないような状況になりましたが、なにか割り切れない思いがしてなりません。

昭和三十一年商工会議所の会頭に就任以来、産業と教育の密接な関連から教育関係に努力させてもらう機会が多くなり、現在は県の産業教育審議会、並びに後期中等教育審議会の会長をお引き受けして私の人生の晩年の御奉公と決意を新たにしている次第であります。

高校教育の振興の推移は進学率に現われております通り、昭和三十年が約四〇%、四十年が六二%、五十年が八四%と増進し、五十三年度は後ればせながらいよいよ九〇%の大台に達するであろうと予測され、もはや義務教育同様となって参りました。

一方高校卒業生を大幅に受け入れる産業界の躍進は全く驚異的なものがあり、資源に乏しく、人口の過密な我が国としては、最高・最善の歩みを続けたと申せましょう。産業界がこのような隆昌を見るに至った根源は、国民性の勤勉なことは当然として、やはり教育の普及が大きな力となっていると思います。ことに産業界の技術の高度化、国際的流通機構の拡大に伴い、高校卒業生に課せられた役割は非常に大きく、まだまだ人的要素を満たし得ない状況です。大学出身者が就職難となっております構造不況も、高校卒業生には余り影響がなく、百%の就職率を見ていることでよくわかるのであります。

さて隆盛を誇った我が国の産業界も、最近重大な危機を迎えております。円高による輸出の減退、ダンピングと決めつけられて輸入規制、更に後進国の追い上げ等すべてが頭の痛い悪材料であります。かつて世界に誇る大英帝国の紡績産業に取って代わったのをきっかけとして、順次産業大国に発展した日本は、今度は攻守所を変えて追われる立場になったのであります。繊維・雑貨・合板等の軽工業ばかりでなく製鉄・造船等の巨大産業さえ猛烈な追撃を受けております。

対応策としては新技術の開発、企業のいっそうの合理化等はもちろんですが、人材の養成こそなによりも大事です。ことに次の時代を背負って立つ若い高校生をいかに教育するかが大きな課題であります。「鉄は熱いうちに打て」とのことわざもありますが、エネルギッシュな青春にあふれる高校生に、じゅうぶんな知識の吸収と意気の高揚をせいいっぱい吹き込んでいただきたいのが、高校教育に携わる教師の諸氏に対するお願いであります。

高校教育のため献身的な努力を重ねられている教師御一同の、御健康と御健勝と御活躍を心より念願致すものであります。

 

 

 


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