教育福島0031号(1978年(S53)06月)-022page

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密接な連携のもとに、共感的な受容の中で解決へのいとぐちを見つけ非行化の防止につとめることがたいせつである。

イ、 学校生活に障害はないか。

個々の生徒の持つ生活は相当に幅広く多面的なものである。そのすべてに適合し、満足し優越することはむしろ不可能なことである。だれしもが挫折疎外、不満等のつらく苦しい感情を抱くものである。そしてそれに対する無意識的、意識的反応として、反社会的な形の自己規制が働くことが多い。多感で不安定な年齢にある生徒にとってこれらの障害に耐え抜き自力で対応することは容易でなく、多くの者は逃避、攻撃、補償、同一化等の行動に走る。学校における指導に限界はあるとしても、生徒理解がじゅうぶんなされ、正当な評価が行われるなど、教育的配慮が行き届いていれば非行の防止は可能である。

○教師とのふれ合いによって閉ざされた心をほぐし不必要な緊張やコンプレックスを除去する。

○ホームルームにおいて同世代の正しい生活観、ものの考え方を体験させる。

○教科学習への主体的なとりくみを援助する。

○教科外活動等における活動の中から学級社会の中で承認をうける。

等々の援助がじゅうぶんに行われることが必要である。

ウ、 「第三の生活の場」はどうなっているか。

生徒が家庭、学校の生活に適応できず、自己実現の道が阻まれている場合、精神的な安定が得られ、存在が認められるような、家庭も学校の誰もが知らない第三の生活の場を求める。友人との交際、趣味の世界、娯楽、社会的な活動等である。そこには一貫した価値観もなく、価値体系の混乱した社会や文化がある。不良交友もあろうし汚染された環境もあろう。

もとより家庭、学校での生活への適応が改善されることによってこれらの第三の生活の場から生徒を連れ戻すことは可能である。しかし多くの事例は、学校の指導体制のすべてを活動させてもなお、校内外の好ましくない仲間集団、好ましくない出版物、非行地域等からの切り離しに多くの困難さを感じている。

2) 非行防止のための基本的事項

昭和五三年三月七日付、文初中第一三八号の文部省初中局長通知は、最近の児童生徒の社会的に反響の大きい問題行動の発生について、その指導の徹底を求め六項目にわたって指導上の指針を示している。その骨子は次の通りである。

◇創意くふうを生かし豊かな教育活動を展開すること。

◇生命の尊重について教育を徹底する。

◇個々の生徒の実態をじゅうぶんには握する。

◇生徒指導に関する学校の組織体制を整えること。

◇家庭との連携を密にすること。

◇関係機関等との連携を密にすること。

これは教師の教育活動の全般に言及した基本的な事項であり、生徒指導のすべてはこれに尽きるものである。この指針を踏まえて、非行化の予防については、生徒みずからの品性をけがし徳性を害する行為をはじめとし、集団生活の中の規律違反もそれが生徒の不良化につながる場合を含めて、広く生徒の健全な発達を希求する考えで指導を進めなければならない。特に次の点について充実した実践をはかりたいものである。

◇指導体制の検討と確立

高校生の行動半径の広さ、非行の各校間で集団的に発生する例が多い傾向に対応するために、自校の特性を生かした指導体制の中で、各係間の連絡方法の改善、教師間の好ましい人間関係の樹立、生徒指導に関する研修体制の整備等の検討改善とともに、地域内高校(中学校)、警察その他機関とのインフォーマルな関係の樹立を心がけること

〈好ましくない事例〉

○非行情報がH・R・Tどまりで全校的な問題として共通理解がはかれていない例。

○ 指導部からの要請が一律、画一的で学年会の機能が発揮されていない例。

◇学校、生徒、家庭の一体化をはかる。

「解っていない」「知らなかった」「何を考えているのか」という批判なり、反省なりが三者の間で取り交わされる場合が多い。また学校と生徒、生徒と家庭、学校と家庭のいずれかの組み合わせで残る一方を批判する場合がある。これは極めて拙劣なことで問題の解決にならない。

学校・家庭はなによりも生徒の健全な育成を中心において、いずれも等距離にあって意見を述べ、反省を重ね、生徒の成長を期待すべきである。人質論も誤りであり、学校一任も誤りである。共謀せず、なれ合わず、三者は一体となりあくまでも受容的に、しかも厳しさをもって生徒理解と生徒の自己開発の援助に徹することがたいせつでありそのことが学校が家庭からの信頼・信託をかち得る結果を生むことになるものと思われる。

◇長期的な展望のもとに生徒指導を進める。

すでに非行を犯した生徒の、その行為をとらえてその非を追求し、その行為をもって生徒を自明な好ましくない生徒とすることは、生徒をいよいよ深い絶望のふちへ追いやることになる。第一の非行は、その生徒の自己主張の叫びであり、自己実現の道でのつまずきであると受けとめ、第二第三の非行の苦しみから救うためにも、まだ開かれていない本人の優れた一面を発見し助長しながら、将来に向けて明るい希望を持たせるようにしたいものである。ボランティア活動に勧めるなど、生徒の主体的な活動を通して社会人としての生き方に気づかせ、人生の問題を提起できるような指導を進める発想がたいせつである。

 

 

 


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