教育福島0031号(1978年(S53)06月)-031page
(2) 三つ折りぐけ(1)そで口2)えり下3)すそ)
1) 2) 3) 考察 人数(%) A' ○ ○ ○ 手法の理解が正確で習熟 30(31.9) B' ○ △ ○ 手法の理解は正確。理解力はといが、なれるにつれて不正確 10(10.6) C' △ ○ ○ 理解は不十分だが、努力して正しい手法が身についた。 21(22.4) D' △ △ ○ 理解はおそいが、向上する。歩みが遅いから反復指導が必要。 13(13.8) E' △ △ △
×△ △ 理解不十分なまま向上しない。
理解力やや劣るが、やや回復。20(21.3)
で、ゆっくりと、正確に実施させる。
わきぬいしろは耳ぐけを身長の四倍近くの長さに行う部分であるから習熟が期待できる。しかし単純な手法の反復で、緊張を欠くことも予想されるから、速度をはやめて実施することを要求する。ある程度の抵抗を与えることは、それを乗り越えようとして主体的に学習する意欲を起させることができるように思う。三つ折りぐけも同様にえり下、すそぐけの個所で習得を確実なものにしていくことができる。
それらの結果を部分の評価によってまとめてみると表1のようになった。1)や1)に○印のあるものは初期の理解が正確である。B、B'のものは学習のだれがみえるのか、後の方で不正確になってきている。学習の緊張を持続させ、速さが加わっても正確さを保つよう努力させたい。DD、EEの生徒には拡大教具等による示範と、机間巡視での個別指導が必要である。
三つ折りぐけの初期理解の人数が、耳ぐけのそれに比して少ないのは、洋裁のまつりぐけの手法と混同しているものC'D'E'のなかに多かったためで、この点も指導の際に留意しなければならない。基礎縫いの練習をしてから製作に入るのがよいか、製作実習のなかで身につけさせる方がよいのか、指導時数が不足がちななかで、常に迷うのであるが、生徒の習得の状態からみて練習は省略してもよいように思う。
三、 技術的知識・理解の習得のすがた
被服実習はとにかく形をつくらなければならないから、技術的な知識の理解が不じゅうぶんでも、段階をふんで製作すればいちおうでき上がる。この程度のとらえ方をして学習にのぞんでいる生徒が多いように思う。
学習によって生徒が「学び方」を身につけ、転移性に富んだ知識や技能を習得してこそ、教材の意義があるのだが、縫うことにのみ追われて、それらを理解する余裕がないのだろうか。
そこで「なぜこのような方法が必要なのか」という技術的な知識の理解が、どのように学習されているかを調べてみた。
ひとえ長着はすそを三つ折りぐけにするが、その際、背縫い、わき縫い・おくみつけの各縫い目のきせ山がくずれないようにするため、きせ山のきわに返しぐけの針目を出して、きせ山を抑える少量だが重要な個所である。この部分を板書、示範、標本提示などによって指導したのち、机間巡視をして個別指導をする。
ところがその場ですぐにこの部分の製作にとりかかったものは、ほとんど正確に実施したが、それは四十七名中の十三名であった。五十年度本校家政科第一学年次の女物ひとえ長着(ゆかた)と、この生徒の第二学年次の女物ひとえ長着(ウール地による絹毛仕立て)の学習でこの部分の習得の状態を評価の記録からまとめてみると表2のようになった。一・二年を通じ延べ七十三名(三八・八%)は予想外に少ない結果であった。腰囲(こしまわり)の約一・五倍の長さのすそ幅の中に五針だけ行う返し針は、すその三つ折りぐけの作業量にかくれて、生徒の意識関心の中ではきわめて弱い存在であることがわかる。進度の遅れているものには、いっそうこの傾向が強くあらわれる。
教材の構造については、指導目標からの分析はもちろんであるが、生徒たちがどのような認識のもとで学習対象として受け入れているのかという点についても、考えてみなければならない。
なお個々の生徒の習得の状態をみるため、追跡調査(図2)もふくめて表3にまとめてみた。実習で身につけた内容がどの程度定着したか知ろうとしたが、実習を正確に行ったものに正解者が多く、ひどい誤答が少ないということと、逆の場合も同様な傾向がみられる。誤答の傾向などで理解の状態や習得していく過程がわかる。
方法が適切かどうかまことにおぼつかない内容であるが、生徒の実態に即応した学習指導をめざして、今後も努力を続けたいと思う。
図2 ペーパーテスト「すそぐけ返し針の位置」結果
表2 すそのしまつの中での返し針の実施状態
評価 1年次ゆかた 2年次絹毛仕立て 1年にわたる延数 ○きせ山の返しぐけの位置・方法共に正確 39((41.5)人% 34(36.29人% 73(38.8)人% △きせ山に糸を渡す。きせ山から離れすぎる。 30(33.0) 35(37.2) 66(35.1) ×ふつうのくけ方の針目。きせ山をおさえ忘れている。 24(25.2) 25(26.6) 49(26.1) 計 94(100) 94(100) 188(100)
表3 すそのしまつ「きせ出返し針」の習得状態
実習 ペーパーテスト(2年次末) 計(%) 1年次ゆかた 2年次ウールひとえ 正解 誤答 A B C D ○ ○ 13 7 5 4 0 29(30.8) ○△ △○ 3 5 2 9 1 20(21.3) △ △ 3 0 3 5 1 12(12.8) △× ×△ 3 1 7 5 4 20(21.3) × × 0 1 4 4 4 13(13.8) 計(%) 22(23.4) 14(14.9) 21(22.4) 27(28.7) 10(10.6) 94(100)