教育福島0031号(1978年(S53)06月)-030page
研究実践紹介
被服製作の学習指導
福島県立若松女子高等学校教諭
長谷川冨美
被服製作の学習指導は、ひとつの教材から多数の技術的知識と、基礎的技術、態度等を習得させることができるが、それだけに内容も豊富になり、指導時数は一題材に三十〜四十時間を計画することが多い。生徒個々の製作に要する時間は、個人差もあるがこの三〜五倍を要するものと思われる。
このような長期にわたる学習指導展開の過程で、能力や意欲の個人差と、クラス全体の時期的な緊張やたるみも入り混って、生徒の学習状態は種々の様相を呈する。とくに最近は能力差が大きく、個々の生徒の学習による変容も同一ルートをたどらず多様化してきているように思う。
これらの状態を正しくはあくし、対応のあり方を考えるてだてとして
○生徒はどのような状態で学習しているのか。(学習進度と学習の場における生徒の位置)
○学習に対する抵抗やつまずきは、どのような部分にあらわれるのか。(教材構造の分析と学習者からみた教材構造)
○学習の各部分ほどのような習得のされ方をしているのか。(習得してゆく過程と学習への対処のしかた)
以上のようなことを知りたいと考えたつたない試行の中から、その一部を報告することにする。
一、 進度差による多様な学習展開
被服製作の教材を選択するにあたっては、内容の系統性や、易から難への順次性をふまえた配列を考慮するわけであるが、一着の被服の製作順次は、被服の構成上かならずしもこのような配列になっているとは限らない。そのために生徒にとっては抵抗の大きい内容がはじめに連続して出てくる場合もある。また製作実習は各自が一着ずつ作るから、全員が同一量の学習をすることになる。しかも、じゅうぶん着用できる衣服として完成させなければならないので、学習の到達点もほぼ同一になる。したがって生徒の理解力や技能の差は、そのまま学習の進度差となってあらわれ、図1に見られるように学習展開のどの時間をとってみても授業内容は「複式」もしくは「複々式」にならざるを得ない。
図1 学習進度の記録(51年度家政科第2学年ウールひとえ長着)
※授業回数が多くなるにつれて、進度差がひらく。学科に対する抵抗のあらわれ方がわかる
学習の遅れをとりもどすには、放課後の補充指導に参加させたり、宿題にしたりするわけであるが、最近の生徒は自主的学習の習慣が身についてない者もいて、遅れがいつまでも尾をひくようである。授業中も製作段階標本などを示し、手をとって指導をするが、本時の主眼を見失わないよう常に気を配らなければならない。
二、 基礎技能習得のすがた
耳ぐけ、三つ折りぐけなどのくけの技法は、特に練習の場がなくても、製作に支障はないだろうか。女物ひとえ長着の指導では時間節約のために、布の持ち方、針の動かし方、針目の間隔、表目の出し方等を教師の示範によって理解させそで口といしき当(あ)ての個所
表1 基礎技法の習得状態(ゆかた)
(1) 耳ぐけ(1)いしきあて2)わきぬいしろ)
1) 2) 考察 人数(%) A ○ ○ 手法の理解が正確で、習熟しつつある。 60(63.8) B ○ △ 手法の理解は正確であるが、なれるにつれて粗雑になる。 10(10.6) C △ ○ 理解はおそいが、なれるにつれて、正確にできるようになった。 12(12.8) D △ △ やや不正確な理解のまま向上しない。確認の機会が必要。 12(12.8) E × △ 理解が不正確であったがやや回復。もう一歩のつみ重ね必要。