教育福島0033号(1978年(S53)08月)-020page

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心身障害児の進路の相談・指導・援助

 

作業生産学習に励む

 

作業生産学習に励む

 

はじめに

 

障害者なるが故に客観的な障害とは別に、偏見を含む職業的ハンデキャップを負いながらも、今後当分の間、障害者が自力で職種や職場を開拓しなければならないだろうといわれる。就労、進学への意欲をじゅうぶんにもやしながらも、現実的な問題となるに従いはたと行き場を失う事例も多い。心身障害者にとって進路の選択は、ややもすると進路への失望とあきらめの過程となりやすい。

今後とも、もっと就労、職業そのものに対する研究にすべての人が熱意をもつべきであろう。働らく世界の現実を生徒が真に自分のものとしてとらえさせる手だての探求もなさねばならない。

今回、各校の進路指導の姿と課題を紹介し、今後の指導の指針としたい。

最後に、学校と事業所のプロジェクトチームのあり方の例として福島市中学校職能開発研究協議会のユニークな活動ぶりをつけ加えた。

 

一、進路指導の態勢づくりと指導活動

 

福島県立郡山養護学校

 

本校の児童生徒は小学部、中学部、高等部の三学部に分かれ、また、寄宿舎、医療施設療育園、自宅とそれぞれ分かれた生活拠点をもっている。

児童生徒の障害も身辺処理全般に介助を要する重度の者から、治療がすんでほぼ健常者である者まで多様である。進路も、一般の小中学校、高校、大学進学や就職のほかに、自立不可能で福祉施設に入所する者や、行くあてがなく自宅で親の世話になる者など多岐にわたっている。

本校では、学校教育全領域にわたり、生徒が将来どう生きて行くのが最も意義深いことであるのかということを進路指導の基本にしている。本年度は、H・Rにおける進路指導の時間の確保と充実、進路相談の強化、進路開択の強化を努力目標として指導の充実を期している。

(一) 校内の指導体制

養護教育は即進路指導といわれる。本校では、全教職員が進路指導に当たるという基本方針をかかげ、運営は進路指導部が中心となる態勢をとっている。進路指導主事を中心に企画、調査資料、指導、相談、渉外、庶務会計の七係にわけて分担している。指導の実際面は学級担任を中心に担当寮母、教科担任、養護・訓練担当者がそれぞれの立場からすすめている。

全職員が「児童生徒一人一人がよりよい進路に、よりよく適応して行く」という共通の視点をもって日常の教育活動に当たることが最も重要なことである。

(二) 指導の実際

小学部では、学校生活の充実即進路指導ということで、これに全力をあげている。

中学、高等部では、さらに毎月一時間のH・Rの時間を特設進路指導の時間にあて、学年目標、月別指導計画に従って指導を行っている。

中学、高等部ともに、一年生では自己理解、二年生は進路の諸情報、啓発的経験、三年生は進路の決定、進路への適応、啓発的経験が主たる指導項目である。

二年生の場合、生徒全員で手分けして卒業生及び、知っている身体障害者について、障害状況、現在の状況とそこに至った動機や経路、そこでの喜びや希望、悩みや不安等、一人一人の生活実態を、アンケート、手紙、電話、休みの時の訪問とさまざまな手段を用いては握し、一覧にまとめあげる作業をする。ここから自分の進路をさぐろうとするわけである。啓発的経験の学習では、夏休みを利用して、本校卒業生が多数入所している身体障害者授産施設「けやきの村」で、四泊五日の実習を行っている。入所生とまったく同じ日程で生活、作業訓練の実習をする。

作業種目は、チャームフラワー、製箱(紙)、弱電組み立て等で生徒の職能開発、自己理解に大きな効果を上げている。五十二年度は中学部三年生全員が参加したが、五十三年度は、収容人員の都合で四名しか実習できないのは残念である。

(三) 残された課題

児童生徒がそれぞれの進路でよりよく適応し、生きがいのある生活を送らせたいと強く願っている。

多くのハンデキャップを背負って生きて行かなければならないかれらのために、経験領域の拡大、学力の充実、身体機能の改善向上等はぜひ力を入れて取り組まねばならない。

他方、受け皿、出口の方にも大いに

 

 

 


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