教育福島0033号(1978年(S53)08月)-021page
問題がある。障害者の福祉行政、労働行政の面は、最近かなり進んだとはいうものの、進学、就職の際の門戸はきわめてせまくきびしい。障害者の職業訓練、更生のための施設は入所期間が一年程度で現在の障害者の実態にはあわない。授産施設、療護施設も数が少なく、入所が適当と判定されても入所の順番がくるまで五年以上も自宅待ちという現状である。福祉、労働面の充実が大きな課題である。
卒業式に、卒業生全員を心から祝福し、親ともども晴れやかは気持ちで送り出せる日の来ることを願っている。
二、進路指導のための校内体制づくりと指導の実際
福島市立福島養護学校
精神薄弱養護学校の児童生徒の心身の障害の重度化、多様化の傾向にともない、卒業の段階で一般企業に就職できる者の外、職親や職場適応訓練制度による「やっと就労」の者、庇(ひ)護授産施設や更生施設等でさらに生活、職業訓練を必要とする者等、進路も多岐にわたっている。このような進路の実態から、本校では福祉、労働、医療の各関係機関と常に連携を保ち、誤りない進路を見いだすべく努力している。
(一) 進路指導の校内体制
精神薄弱児の進路指導は、日常の教育活動のすべてかがそれにあてられるといってよい。将来の社会生活、家庭生活のために、今何が必要かを見きわめめて指導をすすめ、同時に将来に対する親の心構えの啓発にも心がけることがたいせつである。
図3 進路指導と予後指導
また、対外機関との連携による資料の収集や啓蒙活動も重要である。本校の進路指導と予後指導の実際を図示すれば、左の通りである。
予後指導については
(1) しゃくなげ青年講座(市中央公民館と本校)の職場、施設訪問
(2) 卒業生動向調査
(4) 勤労者表彰(本校の卒業生で勤務成績のよい者を卒業式に表彰)
(5) 常時相談(進路指導主事が担当)
(二) 指導の実際
高等部卒業生男子。IQ49。母子家庭。特に機能障害はない。性格はまじめでおとなしい。高等部三年の四月に職業安定所、本人、親と協議し次のように方針をきめた。
第一次目標 Cスプリング製作所
第二次目標 G食品工業株式会社
第二次目標 S自動車ボデー工場
六月、九月の定期校外実習をCスプリングで実施。夏休みも同工場でアルバイトを希望しがんばる。しかし不況と円高の影響で新規採用見送りとなり採用されず、第二、第三次目標も同様の理由で流れる。あとは、「とび込み求職」以外にない。本人と歩きまわり、将来性があり、本人に適合する。Y製めん所にたどりつく。職場適応訓練制度を適用してもらい六か月後に正式採用の内容を得た。本人は、四月以来一日も休まず真剣に手よりめんの製法を学んでいる。
県より支給された六月分訓練手当は、基本手当、受講手当、通所手当あわせて総額六万六千二百円である。
(三) 残された課題
卒業後、一般企業への就労が困難な