教育福島0035号(1978年(S53)10月)-044page
福島の文化財
県指定重要文化財
紙本著色両界種子曼荼羅
所在地 双葉郡浪江町北幾世橋字北原6
胎蔵界曼陀羅
金剛界曼陀羅
密教修法のため多くの尊像を一定の方式にもとづいて整然とならべて描いた図を曼荼羅とよび、そのうち大日経と金剛頂経に基づいて描かれたものをそれぞれ胎蔵界曼奈羅、金剛界曼荼羅(あわせて両界曼荼羅)という。
普通は諸仏を彩色された尊像であらわすことが多かったが、別に画ではなく、諸尊を象徴する梵字(=種子)で表現する種子曼荼羅もあった。種子曼荼羅は平安末から鎌倉初期にかけて相当作られたけれども遺存するものは少ない。
大聖寺の両界種子曼荼羅は室町期のものでやや時代は下る。各幅とも、縦七尺三寸六分(二百二十三センチメートル)横三尺八寸二分(百十六センチメートル)あり県内ではめずらしく、貴重である。これら曼荼羅の横には小さな字で銘記があり、「文明六甲午五月九日」(=一四七四年)に製作されたこと、筆者が僧侶であることなど、成立の由来を明示している。
この記録は両界種子曼荼羅が、室町期になっても、専門の仏画師ではなく僧侶の手によって描かれていたことを示すもので、絵画史的にも注目すべきものである。
(所有者 大聖寺)