教育福島0036号(1978年(S53)11月)-041page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

やさしい教育法令解説

校務分掌について

 

一、校務分掌の意味

 

学校は、教育目標を達成するため、児童・生徒等に対して有機的、組織的に教育を施す公の性質をもつ施設であり、学校の教育が真の成果を収めるためには、校長はじめ教職員が相互に協力し、校務を分担して組織的に学校運営を行うことが要請されています。

ところで、学校教育法第二十八条第二項は、「校長は、校務をつかさどり所属職員を監督する。」と規定しています。ここで校務とは、一般に、学校が機能を果たすために必要ないっさいの事務を意味します。その内容を例示すると次のようになります。

 

〇職員の指導監督及び児童・生徒等の管理に関すること

〇公文書の受理と発送に関すること

〇公簿の保管に関すること

〇諸会計に関すること

〇教育課程の編成に関すること

〇教具、図書の購入及び保管、活用に関すること

〇校具の購入、保管、活用に関すること

〇学校の諸種の施設、物品等の維持に関すること

〇PTA活動、同窓会活動に関すること

 

学校では、これらの校務が校長の総活と責任の下に教職員に分担され処理されているが、このことを校務分掌といいます。

 

二、校務分掌の決定

 

校務分掌が学校における仕事のすべてを組織的、効果的に処理するため教員にその仕事を分担することであるから、校務を分掌させる者は校長であることはいうまでもありません。

福島県立学校の管理運営に関する規則第四十一条も「校長は、この規則に定めるもののほか、校務の分掌組織を定め、これを職員に分担させるものとする。」とこのことを明らかにしています。

もちろん、分掌組織を決定する際に職員等の意向をしんしゃくすることは必要なことです。

 

三、教諭の職務と校務分掌との関係

 

教諭は、「児童の教育をつかさどる」とあることから、教諭に対して教育以外の事務を分担させることはできないのではないか、という問題が宿日直勤務をめぐって生じたことがあります。

この点に関し、適切な判断を示した判例がありますので次に紹介しておきます。

「もとより教諭は、児童・生徒の教育を掌ることをその職務の特質とするのであるが、その職務はこれのみに限定されるものではなく、教育活動以外の学校営造物の管理運営に必要な校務も学校の所属職員たる教諭の職務に属するものと解すベく、従って学校施設・物品・文書の管理保全および外部連絡等の目的をもって行われる宿日直等もこの意味において教諭にこれを分掌すべき義務があり、上司たる校長は教諭に対し、職務命令をもって宿日直勤務を命ずることができる。」(東京高裁昭和四十二年九月二十九日)

 

四、校務分掌としての主任制

 

学校における教育指導面を強化することにより、調和のとれた学校運営が行われるのにふさわしい校務分掌のしくみを整えようとの趣旨から、教務主任、学年主任、生徒指導主事等が学校教育法施行規則上に規定され、それぞれの職務に係る事項について教職員間の連絡調整及び指導、助言等に当たることになったことは周知のとおりです。

本県における「主任」制について二、三言及しておきます。

〇各主任等は、教諭をもって充てられる。従って、付加された職務を遂行するものと解される。

〇各主任等の職務内容は前述のとおり連絡調整及び指導、助言であるから職務命令を発することはできない。

〇各主任等は、校務分掌の一翼を担うものであることから、その発令は校長の権限とされている。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。