教育福島0040号(1979年(S54)04月)-036page

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昭和53年度

県内出版物

-郷土の本は図書館ヘ−

 

●図書館コーナー●

 

●図書館コーナー●

 

昭和五十三年中に県立図書館で収集し得た県内出版物は約千三百冊で、年々増加の傾向にあります。

それらの中から主要な単行書を選んで"ふるさとの本展"というささやかな展示を先日当館で開きましたが、なかなかの反響がありました。また、地元新聞社の主催で昨年より県内出版文化賞が発足し、昨年三月刊行の「須賀川市史」第7巻にも市町村史としては珍しく「出版物」の章が設けられるなど、郷土の出版物に対する県民の関心が高まっていることが伺われます。

次に紙幅の許す限り、昭和五十三年中の県内出版物を概観して見たいと思います。

教育関係では「福高八十年史」「相中相高八十年」が、資料の博捜に基づく校史として重厚な内容で、他に「相女七十年」・喜多方市立第二中学校「創立二十周年記念誌」や「毎日新聞」福島版連載の「香るたちばな福島女子高校」も単行本として発刊されました。いわき市立汐見が丘小学校の教諭、佐々木義勝の編集による児童詩集「おかあさんはあらしの山、私はにげる波」は、文芸指導の資料としても興味深いものです。

郷土史では写真や図版を駆使した目で見る「図説福島市史」が好評で、他に「五十沢村誌」・「西郷村史」・「矢吹町史」第3巻・「三春町史」第7〜8巻・「熱塩加納村史」第3巻・「相馬市史」第2巻などが刊行されています。「久留米開墾百年の歩み」は明治十一年、はるばる九州久留米藩から安積平野開拓に入植した旧士族達の苦難と業績をたどった労作です。大内貞一「稗・信夫山稗文集」は福島市信夫山にある稗を写真と碑文とともに集成したもので、印刷はコピーを利用しい製本も手づくりの貴重な資料集。碑といえば、安藤伝「福島県内芭蕉の句碑と怐vも六年間の歳月をかけてコツコツと県内の芭蕉句・詞碑八十三基を巡り、記録しています。

「ふくしま散歩会津版」(歴史春秋社)は「道ばたの文化財」(福島民報社)とともに、開発の波の中で忘れ去られようとしている身近な文化財や名もない野仏・道標などに光を当て、ふるさと散歩や歴史探訪のガイドとして便利。

県内出版文化賞を受けた草野日出雄の写真でつづるふるさとシリーズは、今年も「伝承いわきの遊び」「実伝いわきの漁民」の二冊が刊行されました。小島一男「会津三十三観音御詠歌」「会津切支丹物語」は、会津の宗教的風土についての資料。

機関誌では、福島競馬場の沿革をたどった「人馬一体・福島競馬六十年」が話題となり、県議会百年を記念した「福島県議会百年」や「福島県信金三十年史」、薮内喜一郎「福島県消防史」などが発刊されました。

「福島県の民俗音楽」(県教委)は民謡やわらべ歌、さらに民俗芸能に伴なった音楽を楽譜・歌詞・解説を付して採録し、菊田喜八郎によって復刊された「福島県地理歴史唱歌」とともに、貴重な県内音楽資料として注目されます。日銀福島支店の保存を訴えて渡辺三恵子によって出版された絵本「ぼくらの街のまん中に」は、消えゆく明治の面影への惜別の思いにあふれています。

同人誌では、会津高田町の蛯原由起夫によって「詩脈」復刊一号が出され、宗像喜代治の評論「現代詩の理念」を掲げた「現代詩研究」が、二本松から創刊されました。北斗の会刊「自由人」は本多隼男の編集で、三谷晃一・岡村史夫などを結集し、創刊号には薗部一郎が本県出身の歌人山本友一に関する力作評論を寄稿しています。また、須賀川短歌会からも「峠」が創刊されました。

ところで、県内で出版された本は、貴重な郷土の財産ですが、書店で販売されず少部数の自費出版のものが多いので、入手困難で散逸してしまうものがたくさんあります。県立図書館ではこれら県内出版物をできる限りはば広く収集して、誰もが自由に利用できるよう保存していきたいと努力しておりますので、ご協力下さるようお願い申し上げます。

 

 

 


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