教育福島0041号(1979年(S54)06月)-005page

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巻頭言

オッタッタカショ

福島県教育庁義務教育課長 舘光雄

 

もとに教育の世界にこれを置換して、「教師の言動の厳しさ」を語られていた。

 

私の尊敬するある教育長さんが、新聞に「ホトトギス」の鳴き声のことを載せたことを記憶している。教育長さんは子供の時、祖母からホトトギスは「オッタッタカショと鳴くんだよ。」と教えられたそうだ。ところが、中学校四年の国語の時間に、ホトトギスは、「テッペンカケタカ」と鳴くと教えられて以来今日まで、ホトトギスの鳴く季節が訪れるごとに、耳をそばたてて聞くが、「テッペンカケタカ」ではなく、「オッタッタカショ」としか聴こえないという。教育長さんは、幼き日祖母に教えられた、かき消しがたい追憶をもとに教育の世界にこれを置換して、「教師の言動の厳しさ」を語られていた。

そんな記憶は私にもある。私の六年の時の担任は数学の得意な先生で、放課後も二、三時間はクラスの児童全員によく補習をしてくれた。「さあ、みんなにカレンダーをかすから、今年の○月○日は何曜日だか聞いてごらん。先生は何を見なくともわかるぞ。」といい、私どもが勝手に聞く日の曜日を片っ端からあてていくのであった。私たちは目を丸くして「先生はすごいなあ。」と感心していると「曜日はなあ、こうしてあてるんだ。」と教えてくれた。それは今も覚えている。6・9・9・5・7・10・5・8・4・6・9・4、(覚え易く、ムククイナトイヤシムクシ)これは一月から順に十二月までにあてはめる数で、これをもとに曜日をあてるのである。例えば今年の五月五日の曜日は、699と数えて五月は五ばんめなので7であり、これに曜日をあてる日の5を加えて12とする。さらに今年の定数(定数は毎年変わる。ことしは一月から十二月まで同じ。)1を加えると13となる。これを7で除して余り6となる。6は月曜から六ばんめなので土曜日というわけである。割り切れは日曜、1余りは月曜日である。これを教えられて四十余年たつが今もなつかしく思い出す。

新採用の先生がたと話す機会があると「一年生のときの担任の先生は?」とたずねることにしている「○○先生」と百パーセント自信のある返事がかえってくる。「中学一年のホームルームの先生は?」となると頭をひねる先生が多い。忘れがたい教師は小学校時代に多いということだろうか?中・高校の先生にしかられそうである。

さて、今回の学習指導要領の改訂のねらいの三本の柱の一つに、「国民として必要な、基礎的、基本的な事項の重視」があげられている。基礎とか、基本的内容は、いずれ「生きて働く力」となるものなので、教育作用の中では重要な内容となろう。「オッタッタカシヨ」は「テッペンカケタカ」にはおそらく直らないのであろう。子供は知識欲に燃えている。小中学校段階では、教えられたことを、一生持ち続けることが多いのではなかろうか。今日も先生がたが正しい知識を真剣に教えられていることに感謝したい。

 

 

 


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