教育福島0045号(1979年(S54)10月)-009page

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特集 学習指導の展開

 

と言うと、「まちどおしいなあ。」、「早く行きたいなあ。」とか「あした、はれるといいなあ。」という子供たちを見ていると、感情表現のたいせつさをつくづく思う。ちょっとした変化に気づき、素直に思ったことを表現できるようにするためにも、そのように子供たちの目と心をむけさせる努力をもっとしなければならないだろう。

ある一人の子供は、家に帰って母親に、「先生がどじょうをとった。」とびっくりした顔で言ったということだが、このようななんでもないことが、子供にとっては、大事なのだろう。子供一人一人の心をゆさぶり、子供の心の中にどんどんはいっていく配慮を持ち続けていく必要があろう。

 

(五) 母親教育

母親が成長すれば、子供も伸びるので、子供を見る目をつける努力を続けたが、校外学習での母子のかかわりをよりょくするためには、教師と子供とのかかわり方を知ってもらう必要がある。

どじょうとりの時、空に円を描いて飛んでいる鳥を「あれは、何?」と聞くと、子供たちは、自信ありげに「カラス」と言う。「あれは、トンビだよ。」と教えたが、子供たちの言語力は、最初はこの程度である。

一か月後、ある母子が、公園に行った時、子供が「あっ、トンビだ。」と言ったという。ここで始めて「トンビという使用語となって、あらわれるわけである。このように、ことばはすぐ出てこないが、何か月後には、生きたことばとして出てくる。これで、母親たちは、「投げことば」、「捨てことば」等の指導方法も知り、歩いていても、何か目に触れるものがあれば、子供にすぐ教えるという態度が出てくる。

次に、ある母親の子供とのかかわりで努力したことを三点列記する。

(母親の記録より)

○ 「にらまれる」

魚の名前や大きさが、はっきりわからないので、子供を魚屋へ連れて行ってさわらせた。そして、目の形やえら、しっぽなどを実際に比べてみせた。何度も、行くので、魚屋の主人に、じっとにらまれたりした。

○ 「かみなり」

買い物に行く時、途中でかみなりがなったので、子供にかみなりのことを説明するのに約一時間話しこんでしまった。夕食の時間が遅くなつてみんなに謝った。

○ 「こげ」

食事の中味がわからない時は、小さい黒板に書いて食事をすることが多かった。味は、そっちのけになりがちで、ぎょうざや焼きものは、こげばかり作って、笑われた。説明が長くなり、ごはんも冷めがちだった。

 

三、授業実践における障害別配慮事項

 

(一) 精神薄弱教育

伊達郡川俣町立川俣中学校

心身障害児を対象にした授業における配慮は、基本的には健常児のそれと異なるものではないが、その具体化の段階では、多様な障害やその程度をじゅうぶんふまえた、きめ細かな配慮をしていかねばならないのは、いうまでもない。

(1) 子供との人間関係を深めること

子供と教師の心のつながりをまずつくっていく。それは、子供たちの中には心の扉を堅く閉ざしている者も多く、心の解放なしに、みずから外界に働きかけたり、外界からの働きかけを素直に受け入れることは考えられないからである。

教師の態度としては、次のようなことが強く望まれる。

・受容的な態度で接し、子供の良い点をできるだけ見つけて励ます。

・その子供に合ったコミュニケーションの仕方を見つけ出して接する。

・子供の立場に立って、親身になって援助してやる。

以上のことは、学習以前の問題であるかもしれないが、あらゆる教育活動の基盤となるものであり、重要視していく必要がある。

(2) 子供の姿をよく見つめること

子供一人一人に対する教育のねらいは、その子の現在の姿から求めていくべきである。「現在の姿を一歩前進させるために必要なことは何か」、また「生活上の課題は何か」等についての検討が大事である。そのためには、一人一人の子供について、「生活」「能力」「性格」等の実態をしっかりは握することが必要となる。

(3) 楽しい、わかる授業であること

この子供たちに、目的志向的な取り組みを期待することはむずかしい。したがって学習に引きつけるためには、教師の創意とくふうで「楽しい授業」「わかる授業」を展開していかなければならない。

・興味や関心をとらえる。

一般に興味や関心の幅が狭い子供たちではあるが、その実態をとらえる。同時に、その幅を広げさせていく活動を意図的に設定していく。

・抽象的な事象を具体的に提示する。

子供たちは、抽象的な思考が苦手であるので、提示内容は、できるだけ感性化、作業化された形でなされることが必要である。例えば、りんごを説明する場合、視覚と触覚と味覚により指導する方が効果的である。また、視聴覚教材や自作教材の活用も大事である。

・学習のステップを細かにすること。

学習のつまずきを少なくして、学習によって、「わかった」「できた」という成功感を多く味わわせていくことがたいせつである。

・無理のない目漂をたてる。

・学習の進度は、スモールステップとする。

・つまずきを予想して、課題解決の

 

 

 


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