教育福島0045号(1979年(S54)10月)-010page

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特集

 

手がかりを準備しておく。

・くり返し学習できる機会をつくる。

・評価を細かにして、わずかな変容に対しても賞賛できるようにする。

学習で得た喜びは、自信となってさらに学習にはずみをつけるようになる。

次に、S子への指導を紹介する。

S子は脳波異常児、IQ三十五。中学二年生の秋に、ようやく数字の読み書き(一から十まで)を覚えた。その後のS子は、表に示したように、みずからの力で生活の場を広めていった。

第一、第二段階では、数字を覚えることによって、いろいろな生活に仲間入りができることを悟ったこと。第三段階では、遊びや係活動の中で自己実現の喜びを味わえたことが大きな励みとなって、この学習を発展させることができたと考える。(みんなといっしょにやりたいから)(一生懸命がんばるよ!)(がんばるから、先生!見ててね)

この目にも見えない、耳にも聞こえない子供たちの訴えを聞き取ること。このことこそ、教師が留意すべき最も大事なことのように思う。

 

(二) 肢体不自由教育 width="370" height="252">

 

(二) 肢体不自由教育

県立郡山養護学校

(1) はじめに

障害の重度化とともに、障害の多様化が進んできている。重度の脳性まひは、発育初期の脳損傷により、重い運動機能障害のほかに、知能障害、感覚障害、性格、行動、情緒等の随伴障害がみられ、その程度により発達の様相もさま、ざまである。運動機能の阻害により、乳幼児の時期から必要な経験が与えられなかったり、また、習得されないまま就学期を迎えてきている。

日常基本動作や身辺処理能力、ことばの習得、遊び、集団参加等の経験が不足し、それらのレディネスが備わっていない状態である。また、聞く、話す読む、書くなどの能力や、ことばの理解力、数える等の学習レディネスも未発達である。このような障害児の指導は、個々の発達段階や障害に応じた指導をし、個別指導の段階から、次第に集団思考に耐える基礎的能力を身につけさせることが重要である。同時に、集団の中で、他の子供の相互作用を図って指導することもたいせつである。

(2) 授業の中で配慮している事項

1) 実態のは握

臨床的観察や心理学的検査等で発達段階や障害に対する配慮事項等を的確には握し、一人一人の問題点をおさえて、指導目標や指導計画をたて、絶えず評価しながら指導している。特に、障害の重い子供の行動の変化は、少ないので、どのような指導をし、どのような行動の変容があったのか評価していくことが重要である。

2) コミュニケーション

言語障害は、障害の程度や種類によって異なるので、特に配慮が必要である。例えば、緊張がリラックスするふんい気を作り、話す意欲を育て、話したときには賞賛し、話す機会を多く与えるような配慮をする。さらに、教師がしっかり聞き取る態度と耳をもち、子供の能力に応じて、読む量や話す機会をくふうし、活発に言語活動ができるようにしている。内言語がありながら話せない場合は、音読表による指さし、筆談、電動タイプ等の補助手段による意思の疎通を図っている。特に、留意するのは、表出言語のない子や、内言語に乏しい子の場合である。

ア 教師の言語指示に反応を示す。

(例)「ハイ」、「イイエ」の反応

イ 子供の表情や身体反応から教師が子供の要求を読みとる。

(例)からだのもじもじ動作

一人一人身体反応が異なるので、入学時に、母親からよく聞いておくことは、指導上重要である。さらに、それに従って、子供と教師のサインを増やしていくことを指導事項に加えれば、より密接な人間関係ができ、教育の効果があがる。

(3) 生活経験の拡大

子供の障害が、重度であればある程経験領域が狭いので、遊びや戸外活動など具体的経験をする機会を多くもつように努める。遊びの指導では、感覚運動的遊び、身体各部位運動遊び、全身的平衡感覚遊び、模倣遊び等は、身体各部の運動機能、情緒、欲求、社会的発達等を促進するばかりでなく、コミュニケーションや感覚学習にも役立っので、多く取り入れる。くりかえしやることにより、快的経験や自発性を促すので、子供の能力に合わせて、自由遊びから、だんだん、遊び方を覚えさせるよう考慮している。

また、学校、寄宿舎、学部、学級等の校外学習なども多くもっている。小学部一年から、花のほか、さつまいもや豆を植え、生産学習を取り入れた。重複障害学級では、社会や季節に関することを中心に、統合学習をしている。

基本的には、障害があっても子供の興味、関心を満足させるよう努めている。教科学習においては、障害や上肢機能の状態に応じて、教具や遊具等を

 

 

 


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