教育福島0046号(1979年(S54)11月)-024page
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幼児の心をたいせつに
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玉川美枝
「先生おはようございます」元気なかわいいひびきが園内に広がり、楽しい園生活の一日が始まります。そして、そのときから園児の視診と指導も始まります。
登園後の自由遊びの時間、おかたづけの時間、そして学級での活動の時間へと進む中で気のゆるみは全くゆるされないのです。
自由遊びのときの視診はたいせつです。年少・年長組や一年保育児も二年保育児の区別も、また男女の別もなく自由に伸び伸びと遊ぶことのできる時間は、朝の自由遊びの時間です。一人一人が遊びをつぎつぎと見つけ、それが核となってグループ遊びへと輪を広げていくこともしばしばです。
園児たちは、遊具と遊び、虫と戯れる中で会話ができるようになり、友達ができ、そして他人の気持ちも理解できるように育ってきます。わたしたちはこうした遊びの中で育つものをたいせつにしながら保育活動に励んでいます。
オルガンやピアニカを弾いて「とってもじょうずね」と先生のほめことばを待っている子。「あら、前よりもずっとじょうずになったのね」などと進歩を認めてやると、近くの子も得意な楽器を持ち出していつしか合奏になっていきます。また、カマキリ二匹を向かい合わせてけんかをさせ、「羽を広げて、かまを大きく上げた方が勝つよ」と喜んでいる年少組の男の子。
「でも負けた方は食べられるからかわいそう。二匹を別々のかごに入れよう」といって弱い方に肩入れする男の子。小さな虫にもやさしい心づかいを見せるようになった園児の姿を見るたびにわたしたちの心はなごみます。
こうした好ましい情景は、日常生活のあちこちに見られます。
指をぶっつけて泣きじゃくっている女の子の指をやさしくもんでやり、「もうすぐよくなるよ」といたわっている女の子は、家のおばあちゃんになってのしぐさのようです。また、園服をぬいで遊んだ後で着ることのできないお友達にそでを通し、ボタンをかけてやっている女の子は、お母さんの模倣でしようか。
園児の汚れのない、澄みきった美しい心は、ほんとうにかわいいものです。
遊具や楽器や虫に心をひかれ、ガラス玉を宝のようにたいせつにしている姿に接するとき、私たち教師もいつしか園児そのものの心になってしまいます。
園児の言葉やしぐさは、私たちにいろいろなことを教えてくれます。
すぐ友達とけんかをする男の子。母親の姿を追って泣き出す小さな子。おしゃまでもの知り顔の女の子。どの子もどの子も毎日喜んで幼稚園に通ってきます。そんな園児たちのレベルまで自分を下げていっしょに遊びながら、その中から多くの教育の手がかりを得ようと努めている毎日です。
わたしたち教師は、このようにして園児に対して教えてやろうという構えを捨て、子供のもつ内なるものへのはたらきかけや、伸びようとする芽をそっと引き出し、育てようと心がけています。なにげない園児の表情や動作の一つ一つに隠されているほんとうの気持ちを読みとれる教師。その気持ちをたいせつにできる教師になろうと、これからも勉強しようと思っています。
(下郷町立下郷幼稚園教諭)
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コオロギさんになって
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