教育福島0050号(1980年(S55)04月)-046page
ふるさと深訪
県指定重要文化財
木造地蔵菩薩坐像 一◆
所有者 長福寺 所在地 いわき市小川町下小川上ノ台一二〇番地
本尊地蔵菩薩は、寄木造り彩色で、玉眼嵌入、左手に宝珠、右手に錫杖をもち六地蔵中の大定慈悲地蔵の形に造られている。面相は髪際線が額中央で下方にカーブし、切長の伏せ眼、きりっと結んだ口唇、張りのある紐耳等に鎌倉時代の名残りをとどめるが、特徴的なのは、裳裾先が反転して垂下する垂下様式になっていることと、衣全面に大きな菊花の土紋が見られ珍らしい。土紋は粘土を花や葉の雌型に入れて厚手に作った文様である。
このような繁雑な彫刻様式は、後期宋朝の影響を受けた鎌倉末期から、室町初期にかけての特色である。
本像は、多分鎌倉の極楽寺から贈られたものであろうが、面貌や作りは円覚寺塔頭伝宗庵の地蔵菩薩坐像(鎌倉末期〜南北朝時代・国指定重要文化財)に類似する。
像高 六十九センチメートル
裾先まで 八十七センチメートル