教育福島0051号(1980年(S55)06月)-011page
果、指導の目標を次のように設定した。
○身体的活動の場を数多く設定し、行動、経験の幅を広げる。
○作業療法的アプローチを考え、作業能力の伸長を図る。
○運動感覚機能の向上を図る。
この目標設定に当たり、その基盤として考えたことは、「社会参加に備える」ということでぁる。
本校の過去二年間の卒業生の進路は、東洋学園に残る者と東洋育成園(精神簿弱者更生施設)に入所する者、その他の施設に措置変更になる者などに分かれる。いずれにしても、児童生徒ができるだけ自立した生活ができるように指導していかなければならないし、教師は、児童生徒の将来を見通して、作業学習など多くの機会を通じ勤労精神の高揚を目指しての指導などを十分に認識する必要を感じる。個々の児童生徒に適合した指導の目標を設定する場合に「社会参加に備える」ということ、その資質を養成するということを十分に考慮することが肝要であろう。
さて、前述の目標にせまるべく、指導内容と方法を次のように決めた。
○野外、校外学習を多くする。
○作業学習では、一輪車を多く使用させる。
○走る、投げる機会を数多くつくるとともに、トランポリン、ブランコ、シーソーなどで遊ばせる。また、鉄棒に興味を持たせる。
小学部の修学旅行-昼食後のひととき-
これらの内容を少しずつ、あせらずに指導してきた。精神薄弱児の教育に携わる者の心構えとして、「のん気に」、「根気強く」、「元気で」が大切であるといわれてきたが、まったくそのとおりであると思う。集会中に、他児の髪をつかむのでしっ責すると、泣きだしたり、物を投げたり、足をパタつかせたり等、手に負えないこともしばしばであった。また、鉄棒にやっとつかまったのでまわそうとしたら抵抗し、教師が肩を痛めたこともあった。そしてそのつど、この三つのことばを反すうしては、気を取り直してきた。
また、指導の経過の中で特にK・A児について、全職員に知ってもらう事態が生じたときは、「生徒指導記録」の用紙に記入し、場を設定してもらい、共通理解を図った。その後、各担任からも打ち合わせなどを通して、生徒指導のケースについて話し合った。
昨年度、現職教育のなかで、小学部普通学級部会が位置づけられ、事例研究を行ったことがある。そのとき、K・A児について提起したところ、彼女は、眩うん(めまい)状態を好むことが分かった。また、本校と東洋学園とのケース会議において、保母から日常生活についてさまざまな角度からの情報が得られ、本児の指導の見直しや指導方針の修正にかなり役立った。
のりものごっこが大好き
昨年度後半の観察記録(抜粋)
○朝、きげんよく教室に入ってきて、鉛筆を出してノートに「1」を書き始めた。手にとって数字「2」を書かせたが、また「1」にもどってしまう。
○寒い日であったが、一輪車での土の運搬作業をさせた。はじめに指示した場所から、だんだん近くの位置におきはじめる。作業が終わりに近づくと、さっさと用具を片づけはじめた。
○鉄棒のところに連れていきまわるように指示したら、クルクルと前まわりを始めた。声を出して笑いながら遊ぶ。
一年間、K・A児とともに生活してみて、彼女の能力をどれだけ引き出せたのだろうかと反省することが多い。もっと別な方法があったのではなかろうかと反省するときもある。しかし、昨年度の前半と後半では、はっきり変容のみられることが救いである。
県立養護学校となって日も浅いので試行錯誤が多く、生徒指導についても同様である。今後の課題としては、
1 生徒指導の位置づけを明らかにする。
2 県内養護教育諸学校相互に生徒指導について連絡、協議を深める。
3 校内に定期的に一定の手続きと様式により、事例会や研修会を開く。
等が考えられる。これらの課題に真剣に取り組み、養護教育における生徒指導のあり方を追求していきたい。