教育福島0051号(1980年(S55)06月)-033page

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わたしの研究実践

意欲をひきだす一つの試み

福島県立安達高等学校教諭

小林喜助

 

一 研究の趣旨

本校の生徒たちは、十分な能力を持ちながら実力に結びついていかないので、どこに原因があるのか探るべく、学習意識について、その実態を調査してみた。

その結果、学習に主体性がなく、予習して授業にのぞむという基本的な学習態度が身についていないことがわかった。そこで、こうした態度を改善しようと思い、この研究に取り組むことにした。

 

二 研究の概要

(一)生徒の実態

・教科の内容が難しいと受け止め、予習はできないと思っている。

・勉強におもしろさや楽しさを感じていない。

・予習・復習とは何なのかを知らない。

・ 授業時には、ただ教師の説明を聞いていることが学習だと思っている。

・ したがって、問題解決の気力も乏しく、学習上の困難に打ちかつ力や探求する態度も身についていない。

(二)対策

以上のような生徒の実態を検討した結果、次のような仮説をたて、具体的な手だてを考えてみた。

生徒の実態に適合した手引きによって、予習を行わせ、自己評価や反省ができるようにすれば、意欲的に予習に取り組むであろう。

<具体的な手だて>

・予習を可能にするため、手引きを作成する。

・予習の状況と授業のねらいを明確にさせるため、予習内容をテスト形式で実施する。

・授業終了後、記録カードに反省を記入させ、提出させる。

・記録カードを利用して適切な指導をする。また、必要に応じて個別指導を実施する。

(三)実践の内容

1)学習過程(図1参照)

主体的な学習が身につくよう、予習を重視する。

2)手引きと小テスト問題の作成

・作成するとき、次の点に留意する。<手引き>

・平易でわかりやすい文章にする。

・授業のめあてと流れが明確であるようにする。

・分量を十分考慮する。

・自己評価ができるようにする。<小テスト問題>(図2参照)

・授業の流れの中核となるものとする。

・手引きの内容より、A・B・C三段階の問題を選ぶものとする。

A(基本事項のもの)

B(本時のねらいとするもの)

C(上位者を対象とするもの)

・五分程度で解答可能なものとする。

3)授業展開の概略

図1の学習過程で展開し、課題(問題)意識を持って授業にのぞむよう指導した。なお、導入時に、どの程度課題意識(予習の状況)を持っているかを小テスト(図2、九月二十日実施の実例)で試みることにより、学習意欲の高揚を図った。

この小テストは、各自の能力や予習の状況により一題(余力のあるものは自由)を選択解答させ、授業終了後、記録カードに自分の欠点や反省と自己評価を記入して提出するようにした。

4)記録カードの利用(図3表1参照)

・自己評価

・A・B・Cのうち、自分で選択解答した欄の中に、正答の時○、誤答の時×印をつける。

・反省など

・自分の欠点や反省などを簡潔に書く。

・教師への通信を書く。

・教師からの返信や指導を書く。

 

三 結果と考察

(一)事前・事後調査の結果

1) 家庭における学習時間の変容

事前(八月二十九日)と事後(十月十九日)の家庭学習に関する調査の結果は、次のとおりである。

・毎日勉強する生徒が増加した(六十五パーセント)

・勉強の総時間にはあまり変化がみられないが、数学学習の時間は増加した。(一時間以上が約五十パーセン

 

 

 


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