教育福島0052号(1980年(S55)07月)-007page

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はじめに

 

少年非行は昭和五十年以降増加の傾向を示しており、県警資料によると、昭和五十四年には四千人が補導され、−高校生が全体の三二・八%を占めている−依然としていわゆる「戦後第三のピーク期」が続いている。また、高校生の交通法令違反については、五十四年には補導件数において前年に比べて一〇%の減少を見ているものの、その数は少年の違反総数の約三〇%に及んでいる。更に、基礎学力の不足、目的意識や学習習慣の欠如等から学業不適応を起こし、逃避型の問題行動に陥ったり、学校生活から脱落していく生徒も増えている。

このような現状の中にあって、ややもすると目前の非行対策や事故処理に追いまくられ、問題生徒を対象とした矯正的な面にのみ重点がおかれがちである。しかし微視的な対症療法だけでは現状の根本的解決に迫ることは困難である。今こそ「すべての生徒を対象とし、あらゆる教育の場を通して、生徒一人一人の人格や行動のよりよき発達をめざして援助や方向づけを行い、生活意欲の開発と高揚を図り、自己指導の力を育てる」という生徒指導の基本を再確認する必要がある。「木を見て森を見ず」ではなく"木を見るのみならず森も見る"姿勢が要求される。

この意味において、今回は他地区や他校の実践例の一端を次の順序で紹介し、生徒指導のあり方について検討していきたい。

一 五十三年、五十四年度の二年間生徒指導推進地域として県の指定を受けたのを機に、関係団体の協力体制の上に小・中・高一貫の市民総ぐるみ運動を推進している郡山市の活動状況。

二 生徒の非行防止と健全育成、保護者の相互啓発を目的として、地域ごとにユニークな活動を展開している県南高等学校保護委員会の実践活動。

三 県指定の研究推進校として五十四、五十五年度の二か年にわたって、生徒の実態の総点検を出発点として、実態に基づく指導のあり方に迫ろうとしている浪江高校の研究実践。

四 五十四、五十五年度の二か年、文部省指定を受けて、すべての高校にとって今日的課題である「意欲を持たせるための指導」に全校を挙げて取り組んでいる川口高校の研究実践。

 

地域ぐるみの生徒指導の推進

 

近年、青少年の問題行動が著しく増加の傾向にある。この対策として、いろいろと論議されているところではあるが、少なくとも、青少年の日常生活の場としての学校、家庭及び地域社会が調和のある連携を保ちながら、適切な指導、協力を実践する中で、その成果が、期待できるものといえる。

しかしながら、現代のように激しく変動する社会の中では、かならずしも青少年が、適切な判断力と行動力を発揮できる状況が存在するとはかぎらない。更に加えて、多様な価値観が、いりまじる状況の中で、その判断に苦慮していることも事実であろう。

したがって、生徒の健全な育成に当たっては、家庭、学校以外の場における青少年健全育成事業を総合的に推進することが大きな課題となってきた。

青少年の健全育成活動は、大人の側からの青少年に対する健全育成の働きかけと、青少年が積極的に社会に役割をもって参加することに対して援助することにある。非行防止活動は、失われつつある家族、地域社会などの人と人との強い連帯性と団結性と、日本の文化的伝統から生まれた社会に根ざしている「倫理性」を回復することにあるといえよう。

県教育委員会では、この当面する生徒指導上の重要課題に対処するための施策の一つとして、昭和五十三、五十四年度の二年間、「生徒指導推進地域」として郡山市を指定し、地域における生徒指導の実践研究を依頼した。

以下、生徒指導推進地域における、「地域ぐるみの生徒指導」の推進状況について、概略を説明する。

一 福島県教育委員会指定と郡山市の健全育成事業の推進

県教育委員会の指定を受け、郡山市においては青少年の健全育成の諸施策を実施することになったが、県教育委員会はこれらの施策のうち基本的事業として主催共催の形で次のような事業を行った。

(一) 推進会議の開催

(二) 指導者研修会

(三) 広報活動

(四) 地区別研修会

これらの事業の推進のため県教育委員会では、郡山地域生徒指導推進委員会を設置した。しかしこれらの事業は当然、郡山市に対する支援と協力のもとに行われたものであり、推進委員会は、郡山市長の推薦を得て県教育長が委嘱する形をとった。したがって実際の諸事業は、郡山市と県教育委員会が一体となって推進した。

二 郡山市における青少年健全育成事業

次代を担う青少年が、健全に成長することは、市民一人一人の願いであって、「こころ豊かで活気あふれるまち」郡山の都市像をふまえ、市青少年健全育成基本計画に基づき、市民総ぐるみ運動を展開した。

(一) 健全育成推進の目標

1 健全育成住民運動の促進

2 青少年の社会参加活動の推進

3 非行防止と社会環境の浄化

4 青少年指導者の養成と確保

5 青少年関係施設の充実

6 関係機関、団体の連絡調整

(二) 推進組織づくり

 

 

 


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