教育福島0052号(1980年(S55)07月)-013page
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以上は進路についての調査の結果の一部であるが要約して次のことがいえる。
(1) 高校生活をどのような観点でとらえているか
1)入学前は、全般的に見て、豊かな人間性を養う場としてとらえている生徒は極めて少なく、大半は卒業後の就職進学のための過程あるいは手段として考えている。
2)入学後は初めから希望して入学した五三%の生徒は高校生活に一応の満足の意を示しているものの、満足の内容については更に分析し検討する必要がある。
(2) 進路選択を通じて生徒が見る社会について
職業に対して謙虚な目を向け、社会の厳しさをとらえており、職業を通して自分を成長させようという考えは持つものの、将来に備えて自己の能力開発に取り組む姿勢が弱い。
(3) 進路計画について
1)主体的に計画を立てているか、学年が進行するにつれて、かなり妥当な結果が出ているが、自分の適性がわからないために不安に思う生徒が多い。
2)進路計画の変更について
具体的な決定は三年生になってからが多いのは当然だが、計画や希望が当初より次第に小さくかつ変質してゆく。この点についての実態の調整と、指導の個別化が必要であろう。
3)計画・決定の相談相手
計画に当たっては教師に相談する生徒は一〇%程度だが決定時にはかなりの生徒が教師の助言を希望し取り入れている。日常の進路相談の充実を考えたい。
以上、第一年次の研究の結果を概観したが、同校の抱えている生徒指導上の問題点を見つめながら、第二年次の研究、指導を次のように展望し実践して行こうとしている。
五 第二年次への展望
今年度の基礎資料の収集と調整研究をもとに、第二年次は次のことについて研究を深め、生徒の学校生活への適応と自己指導力の強化を具現し初期の目的達成をめざしている。
(一) 就職・進学に対する不安の背景に、学力が低いという要素が存在するので基礎的学力の充実を軸に自信と興味を喚起する指導
(二) ロングホームルームの進路相談の計画を見なおし、全体指導の場における進路指導の充実と、個別指導を通した進路カウンセリングの日常化
(三) 教育相談体制の強化と実践
特に、進路ガイダンスの充実を柱に、教科指導、生活指導の各領域から研究主題の解明に迫ることになろう。
高校生活に意欲を持たせるための生徒指導
一 川口高校について
県立川口高校は在籍生徒数男子百三十五名、女子百七名で、大沼郡金山町に所在する。生徒は全員地域の三つの中学校出身で、地域の伝統的な道徳的生活習慣もあって、温厚で純朴な者が多く非行等は非常に少ないが、積極的な自己実現の意欲に乏しい面がある。地域は小規模な農林業中心の典型的な過疎地帯であり、生徒の大半は地域外に就職する。
二 研究主題の設定
生徒の実態に基づき、小規模校の特質を生かして教師と生徒の信頼に立脚した教育の推進に努めているが、更にその発展充実を期して「高校生活に意欲をもたせる生徒指導」を研究主題として設定した。
三 研究の組織と計画
研究を進めるに当たって資料に示す研究体制を組織した。研究は全職員で実践することを確認し研究の柱として
(一) 目的意識を持たせた上での能動的学習指導
(二) 全人教育の立場から部活動を中心とした生徒会活動
(三) 自己実現のための進路選定に対する指導
の三つの目標を設定し、それぞれに対応する委員会を中心に研究を進めることにした。
研究計画の概要は図のとおりであり、初年度は計画の策定を主に高校生活に関する意識と実態を把握し、次年度はそれに基づいた研究実践と生徒指導を展開する。
四 研究−調査と考察
意欲を持たせるためには、意欲に乏しい原因を探りそれに対応する具体的計画をたてる必要がある。そのために生徒及び保護者を対象とする基礎調査を実施し実態を明らかにした。
(一) 基礎調査からの考察
1 生徒の意識
入学に関する調査によれば、最初から希望して入学した者は予想より少なく男子は三〇・八%女子四四・二%。初め他校を希望した者は男子三五%女子三〇%で、その大部分が職業高校希望である。その理由は川口高校では「希望する職業につくのに不利」「興味関心に合わない」である。しかし「現在入学してよかった」と思っている者が男子六三・三%女子七三%である。
高校生活の目的は「一般教養・基礎を身につける」「就職を有利にするために勉強する」が六〇%「高卒の資格をとる」が約一〇%。また学校に対しては、大半の生徒が「就職対策」「実社会で役立つ知識・技術の教育」「人間としての資質教養を高める教育」を求めている。
このことから大部分の生徒が就職に強い関心を持ち、それに関連した教育を学校に期待していることがわかる。
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