教育福島0053号(1980年(S55)08月)-050page
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ふるさと探訪
県指定重要文化財
工芸品 法然上人像板木 一枚
(裏面善導大師像板木)
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所有者 阿弥陀寺 所在地 相馬郡鹿島町南屋形字前畑一六八番地
法然上人の画像は、京都二尊院の『足曳の御影』、知恩院の『四十八巻伝』所収等が著名であるがいわゆる法然頭の上人が、墨染めの法衣と袈裟を着して坐り、両手で念珠をたぐる姿になっている。
この板木は「正和乙卯(一三一五)十月二十一日」の刻銘が示すように、上人遷化百年後に彫られたもので原板は知恩院にある。その模刻はいくつかあるようであるが、この板木は、頭の頂上が尖って段をなす法然頭、額の三本の皺、右頬の黒子、法衣に包まれた厚昧のある姿態、肉付きのいい手にいたるまで、法然の特徴をあますところなく描写し、鎌倉時代の高僧の肖像彫刻の写実性を十分伝えているので模刻年代は早いと考えられる。
上欄の刻字は、磨滅してハッキリ読めないが、おおむね
「此文者、以黒谷御眞筆寫之。
御影者、上人存日以鏡自見形像、添削之本也。而今削之。
安置知恩院、以博假代、広行流通。正和乙卯十月二十一日」
とある。趣旨は明らかであろう。少なからず浄土宗の普及に貢献したものと察せられる。ことに浜通りにおける名越派の発展に役だったと考えられる。
工芸品としてすぐれているばかりでなく、文化的にも宗教的にも極めて興味ある遺品である。なお阿弥陀寺にはほかに室町初期から江戸時代にかけて十種類の貴重な板木が残されている。
縦 六十四・八センチメートル、横二十八・九センチメートル。
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