教育福島0054号(1980年(S55)09月)-007page

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はじめに

 

進路指導とは、生徒の個人資料、進路情報、啓発的経験及び相談を通じて生徒が自ら、将来の進路の選択や計画をし、就学又は進学して、更にその後の生活によりよく適応し、進歩する能力を伸長するように、教師が組織的、継続的に指導・援助する過程であるといわれている。

このことから、進路指導は単なる進学指導や就職指導に止まってはならないことがわかる。

生徒が自らの意志と責任において進路を選択し、その希望の実現に必要な計画を立て、卒業時の就職や進学などの第一歩を希望実現の線に添って、誤りなく踏み出せるようにするための適切な指導・援助がすすめられ、更に卒業後の生活においても自己を開発し、社会的・職業的自己実現に努めるような態度・能力の育成が望まれる。

そのためには、すべての教師が進路指導の意義や役割を再認識し、組織的、継続的に指導・援助が行われるようにすることが大切である。

以下は、このような視点から進路指導を再認識するための基本的なことを述べ、更に「進路指導実践上の問題点とその改善」について、実践例を紹介したものである。

各学校の進路指導の充実の手がかりになれば幸いである。

 

一 進路指導の基本的性格

 

進路指導とは、中学校卒業時における就職あるいは高校選択の指導であるという考え方がないとはいえないが、本来的意味での進路指導は、職業のあっせんや高校進学のための準備などだけではない。

進路指導は、個々の生徒の能力・適性等の発見と開発を前提としつつ、生徒が自主的に進路の選択をし、やがて自己実現を達成していく可能性を導きだす教育活動であり、将来の生活における生き方の指導・援助であるといえる。

このような観点に立って進路指導の基本的性格をまとめてみると、次のようになる。

 

(一) 進路指導は、生徒自らの生き方についての指導援助である

 

現在、学校教育には、単に知識、技能の習得を目指すものではなく、明日の社会に生きるために必要な自主性や価値観を持ち、自己指導が可能な生徒を育てることが強く求められている。したがって個々の生徒がそれぞれの能力・適性等を最大限に伸長し、望ましい進路を選択して将来の生活において自己実現ができる可能性を目指すことが進路指導である。今後ますますこのような個人的・社会的要請に直接的にこたえる指導・援助として重視されなければならない。

進路指導は、中学校三か年の生活と学習を通じて、一人一人の生徒が自己を理解し、進路情報を学び、啓発的経験を深め、積極的に進路相談を行い、各々の進路設計に即して望ましい進路を自ら選択し、将来の生活において自己をよりよく実現することを教師が組識的、計画的、継続的に援助する教育活動である。つまり、進路指導とは変動する社会の中で正しく自己を生かすことができるように、しっかりした人生観・職業観を進路との結びつきの上で自覚させ、指導・援助する教育活動であり「人生設計」の指導であるといえる。

 

(二) 進路指導は、個々の生徒の職業的発達を促進する教育活動である

 

前述のように、進路指導が単なる卒業時における進路の選択のみでなく、将来の生活における自己実現を目指す能力を育成することであるとすれば、個々の生徒が、就職・進学あるいは家業・家事従事など、どのような進路を選ぶにせよ、生徒がその選択を迫られる時期になってから、急に教師の側から知識や情報を提供したり、検査や調査を実施して進路相談を行うなどして選択に対処するだけでは不十分であるといわなければならない。

進路指導は、中学校三か年にわたって、個々の生徒の発達段階に応じて、その職業的発達をより計画的、継続的に促進する指導であるからである。

一般に職業的発達は、児童、生徒、青年、成人が各々の発達段階で取り組まなければならない職業的発達課題、例えば、職業上の好みを自覚し→具体化し→特定化し→実現する、選択した職業において自己実現を図るなどの各課題に取り組み解決することによって促進されるものである。

中学校段階を「進路の探索と吟味」の時期と見るならば、生徒の職業的発達を促進するためには、次のような指導・援助が行われなければならない。

ア 個々の生徒の能力・適性、興味、欲求、性格的特性、価値観などについての統合的な理解を得ること。

イ 暫定的な進路計画を立案し、現実的諸条件に照らして検討・修正すること。

ウ 仕事や勉学などについて探索活動を行い、啓発的経験を深めること。

エ 職業や上級学校等について多くの知識・情報を獲得し、それらを活用すること。

オ 希望の進路を実現するために必要な方法や手順などを理解し、最善の努力をする態度を養うこと。

 

(三) 進路指導は、一人一人の生徒を大切にし、その可能性を伸長する教育活動である

 

一人一人の生徒をかけがえのない価

 

 

 


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