教育福島0055号(1980年(S55)10月)-027page
(三) 養護・訓練の内容相互間の関係
(一)において、養護・訓練の内容は、A 心身の適応 B 感覚機能の向上 C 運動機能の向上 D 意思の伝達にくくられている点に触れておいた。
A 心身の適応
心理的不適応や健康状態の回復、改善が現実のものとなって、障害の克服への意欲も期待できるものだろう。この面の対処のしかたの一つとして、表3のような例がある。
いわゆるてんかん発作が頻発していて、行動水準の変動が著しいため、対象児の身体の特定部分の変化を行動水準をおしはかる指標として活用しようとした試みであろう。
健常児であれ、心身障害児であれ、一般に、その生活は、図1に示すようないくつかの行動体制の総体(B1.B2…Bnから成りたっている。しかし、B1〜Bnは、年齢にそっていずれも進歩するが、その発現の序列、程度は健常児間においても差異が認めらる。今、なにかの器質的障害をもっている場合には、B1〜Bnの発現の序列や進歩の程度に、目立った差異があらわれてくる。
図2は、図1を書きなおしたにすぎない。われわれが、図1に示すような児童生徒の全生活を総覧したとき、図1のような断片的な行動体制の羅列を避けて、ややまとまった行動体制群(グループ)に分けて考えることがある。
例えば、目がショボショボしている(B1)、きょうは首のうごきがなめらかにある(B2)泣く、笑う‥などは、いずれも、そのときの行動水準を示す目やすになるから、これらは一括してAグループに入れよう。
また、音楽をきいて音の高低にあわせて腕を上げ下げしたり(B6テレビを見て何かが理解できたり、まわりのものにさわったり、さすったりしてそのちがいがわかる、といった行動は、よく似ているので、これらも「ものをみる、きく、さわる」などのBグループに一括しようというふうに、各グループが区分けされているわけである。
ところで、図2の右側に示すようにこれらの行動群は、それぞれ独立した行動群ではありえない。図中の矢印(側肢)は、行動群間にある関係を示そうとしたものである。(ただし、ここでは関係の一端を示したものにすぎない。実際はもっと多くの側肢をだしあっている。)
例えば、泣く、笑うなどの行動はそのときの行動水準の指標となりうるものであるから、Aグループにはいる。しかし、これらは、当事者の身体内外の状態変化に対応しておこるものであり、粗大な調整による粗大な運動行動であるから、Bグループ、Cグループとの関連は密接であることになる。
養護・訓練を主とした教育課程を編成し、指導するとき、こうした背景にある考えやグループ間相互の関係を十分理解した上で、指導計画を立案することが望まれる。
<引用文献>
(注1)須賀川養護学校重心部、一九七九、須賀川養護学校重心教育概要、第一回重心教育担当者講習会資料
(注2)梅津、野々垣、一九八〇、おんがくのべんきょう(上)音楽之友社
図1 行動体制総体
図2 行動体制群間の関係
表3
指標1) 寡動な状態(沈潜性救急行動)
対処
項目1
自発的な学習活動をつみかさねる指導2
身振り信号と行動体制との対応化をすすめる学習に限定する3
休憩、静養を主とした生活をさせる目の状態 すんでいる、おちついている はれぼったいトロンとしている ショボショボしている 首の状態 なめらかに回転する 首の回転のぎこちなさが目だつ カクンと急に下へ落ちる 歩行の状態 安定している ひざがのびない すり足で歩く
指標2) 多動な状態(解放性救急行動)
対処
項目1
1)の1に同じ2
1)-2に同じ3
移動の際は補助者の手をつかむようにさせる目の状態 すんでいる、おちついている キョロキョロ絶えずうごかしている 歩行の状態 安定している じっとしていることがなく、走り回る 交信の状態 習得の範囲で可能 補助者が1メートル以内で一部可能 ほとんど不可能