教育福島0055号(1980年(S55)10月)-041page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

1)反応物質間の量的関係と化学変化における成分元素の保存について

銅粉の酸化により、化学反応に関係する物質の質量の比は一定であることを確認し、銅→酸化銅→硫酸銅→銅の一連の化学反応を行わせ、化学変化においては、成分元素が保存されていることを確認する。

2)気体の反応について

気体反応の量的関係から、分子の存在を、実証的に理解させるという観点で、水素・酸素の生成と水の合成を行う。

3)気体のモル数と体積の量的関係について

窒素、酸素及び二酸化炭素の体積と質量の測定から、気体の体積とモル数の関係を導く

4)化学反応におけるモルの関係について

化学反応における反応物質、生成物質の量をモル単位で示すと、簡単な整数の比になることを、石灰岩と塩酸の反応を利用して確認する。

5)化合物の成分元素について

代表的なイオンや元素について、炎色反応・洗でん反応及び呈色反応を行い、物質には固有な性質があることを確認し、その応用として、炭酸水素ナトリウムや石灰石の構成成分を同定する。

生物分野では、大項目(三)の「進化」から、次に示す内容を取り上げる。

1)細胞の観察

光学顕微鏡での観察範囲で、中学校での学習内容を発展的に取り扱うことから、細胞の観察により、その構造や機能を知るとともに、ミクロメーターによる測定を行う。

2)体細胞分裂と減数分裂

各分裂の観察方法について習得し、分裂過程における各期の特徴を、特に染色体の行動と関連づけて理解する。

3)生物の初期発生の観察と指導展開

生殖と発生では、身近な素材をもとにして、具体的な事象について扱うことから、動物の初期発生について調べる。

卵割における規則性を、プレパラートなどを用いて観察し、胞胚以後の胚の構造について調べる。

4)メンデル遺伝の指導展開

遺伝については、メンデルの法則を中心に扱う。

減数分裂と受精をへて、染色体が親から子へ伝えられることを理解し、遺伝現象のしくみをメンデルの法則(分離の法則)を中心にモデル化して調べ、ショウジョウバエなどによる検証も行う。

昨年度は、大項目(五)「人間と自然」を取り上げ、生態系と物質代謝、人間を頂点とする食物連鎖の機能、人間の生存と緑色植物などを内容とする講義を行っている。

地学分野では、「理科1)」の性格を活かし、講座内容も中学校理科実験の実験の上に立って、基礎的・基本的な実験・実習を大項目(四)「自然界の平衡」内に明記されている中項目から、次に示す内容を取り上げる。

1)地球の形状

地球の内部が層構造をしていることを理解させるための「地球の内部構造を推定するモデル実験」で、シャドーゾーンの測定を行う。

地殻や上部マントルを構成する岩石を理解させるため、「代表的岩石の比重測定と顕微鏡観察」を行う。

地表の変化を、総合的な見方や考え方で地域の地史を組み立てる実習として、「地層及び岩石の野外観察」を実施し、野外学習の方法を研修する。

2)地球の熱収支

太陽放射の「直達日射量の測定」に使用する簡易日射計を作成し、その器具を用いて、実習する。

全地球的な立場から地球の熱収支をとらえるため、季節ごとの半地球規模の気象衛星「ひまわり」の代表的な雲写真を用いて、大気の大循環を調べる。

4)地球の運動

地球の自転・公転にともなう諸現象から、比較的理解しやすい証拠を取り上げて実習する。

ケプラーの方法による作図法を一部用いて、惑星の軌道を作図する。

 

三 おわりに

「理科1)」は、高等学校で全生徒に履修させる科目であることを考えてみると、その中で取り上げる観察・実験項目は、中学校における理科実験・観案の実態に基づいて、無理のない、基礎的、基本的な内容を取り上げることが必要となってくる。

生徒の能力や興味、関心を重視し、学校の実態に添ったものを設定するとなると専門分野以外では困惑する部分が、かなり出てくるのではないかと思われる。また、各学校の施設.設備の状況、時間配当、生徒の能力などからも、それらに対応しての調整や変更がなされるべきであろう。

「理科1)」の実験については、基本的な科学操作が身につくものでなくてはならないし、高度な操作や、特殊な技術を要するようなものは、生徒実験として好ましくない。誰もができる、安全で、バランスのとれたものを、設定したい。

当教育センターにおいては、講座の運営に当たっては、実験・実習に多くの時間を充当し、研修される先生がたが、現場での実践にすぐに結びつくものを、また現場での体験を互いに交流し合って、より充実したものにしたいと考えている。

理科担当所員による「理科1)」の教材構成と年間指導計画、観察、実験とその指導展開例等を内容とした「理科1)指導資料」(仮称)を準備しているので、各校での企画、実施を予定されている資料なども、十分に参考にしたいと考えている。ご協力をお願いしたい。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。