教育福島0055号(1980年(S55)10月)-040page

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教育センターから

高等学校理科B講座の紹介

 

一 はじめに

昭和五十七年度から実施される、新学習指導要領高等学校理科の共通必修科目として、「理科1)」」が新設されることになった。

「理科1)」の目標は、「自然科学に関する基礎的・基本的な概念の形成、自然の等合的な見方、考え方の育成、自然環境についての理解を通して偏りのない自然観を育てることにある」とされている。そのねらいは、

(一)範囲と程度をおさえて、中学校の理科となめらかに接続させ、中学校・高等学校の内容を一貫したものとしてとらえ、計画的に関連づけていくこと。

(二)生徒の選択理科への科目選択が、共通必修の「理科1)」を学ぶことにより、適切に行えるようにすること。

(三)少ない単位数で、国民的教養として必要な自然科学に関する知識・理解が得られる学習であること。

(四)特徴的な自然を探究していく科学の方法が習得でき、原理・法則が理解され、科学的な自然観が育成されることにある。

「理科1)」の内容は、標準四単位というわくの中で、

(一)力とエネルギー

(二)物質の構成と変化

(三)進化

(四)自然界の平衡

(五)人間と自然

の五つの大項目で構成されているが、これは学習内容の扱いの範囲を示したものであり、指導の順序や、まとめ方を示すものではない。「理科1)」の目標・性格に従い、学校の実態−−生徒の能力・適性・進路などに即して、教師が自ら再構成を行って、指導展開していくべきものである。

 

二 高等学校理科B講座

「理科1)」は、総合理科としての性格を持ち、従来の理科とは異なり、高校の現場において、授業担当者は、自己の専門分野以外の教材を指導しなければならなくなってくる。特に観察や実験指導となると、その困難性はかなり大きくなってくると思われる。

当教育センターでは、このような事情から、高等学校理科研修講座の一次研修であるB講座を、「理科1)」に関する研修講座とし、昭和五十四年度より、三か年計画で実施している。この中では、「理科1)」学習指導上の諸問題や、物理・化学・生物・地学の領執における教材の取り扱いと実験指導などを取り上げてきている。研修者は高等学校の理科担当者二十名で、専門分野以外の領域での研修を原則としている。講師には、県教委、各大学及び高等学校等より専門家を招き、三泊四日の宿泊研修を行い、現場での実践にすぐに役だつ内容を目指している。

次に講座の内容について、その概要をあげておく。

物理分野では、大項目(一)「力とエネルギー」から次に示す内容を取り上げる。

1)加速度及び加速度の求め方

ストロボ写真と、記録タイマーを用いて、加速度の求め方を実習する。

記録タイマーの振動数は、シンクロスコープを用いて測定する。

2)自由落下と重力の加速度

主として、記録タイマーを用いて、自由落下の運動を解析する。

重力の加速度を求めるが、それは、物体の質量には無関係であることも確かめる。

3)力学的エネルギー保存則

振子の首切り方法を改良して、力学的エネルギーは保存されることを確かめる。

物理実験の方法では、再現性が問題となるが、この方法では、再現性が極めて高く、誤差も小さい。

4)熱の仕事当量

熱と仕事の関係を、ジュール熱の平易な実験方法で確かめる。

また、簡易な方法で、装置を改良して、誤差の小さな測定値を得る方法も紹介する。

5)力学の理論体系

力学の理論体系を、「理科1)」の範ちゅうに限って取り上げる。

あわせて、「理科1)」全体にかかわる物理量の単位の扱い方についても、検討を加えていく。

化学分野では、大項目(二)「物質の構成と変化」から、最も基礎的、基本的と考えられる。次の五項目についての実験を行う。

 

 

 


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