教育福島0058号(1981年(S56)01月)-040page

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知っておきたい教育法令

 

就学援助

 

一 目的

学校教育法二十五条では、市町村は経済的理由で就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して必要な援助を与えるべきことを規定している。

これは憲法二十六条に定められた教育を受ける権利、受けさせる義務の精神と、教育基本法第三条の教育の機会均等及び経済的理由によって修学困難な者に対する奨学の方法を国及び地方公共団体は講ずべきことと規定していることから立法化されたものである。

このようなことから、就学援助は、義務教育段階の児童生徒の就学を確保し、義務教育の円滑な実施を目的としているものである。

 

二 種類と根拠法

国が行っている就学援助には次のものがある。

(一) 市町村が、その市町村の区域内に住所を有する学齢児童生徒の保護者のうち、生活保護法第六条二項に規定する要保護者(以下「要保護者」という。)及び市町村教育委員会が要保護に準ずる程度に困窮していると認めた者(以下「準要保護者」という。)に対し教科書、学用品、又はそれらの購入費、通学費、修学旅行費を給与する場合に国はその二分の一を補助する。(就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律)

(二) 市町村が要保護者及び準要保護者に対して学校給食費の補助をする場合に国は市町村に対し所要経費の一部を補助する。(学校給食法七条二項)

(三) 市町村等は、児童生徒が伝染性又は学習に支障を生ずるおそれの疾病で政令に定めるものにかかり、学校から治療するように指示を受けたとき、その保護者が要保護者又は準要保護者である場合には、医療費を援助すべきこと。その場合国は所要経費の一部を補助する。(学校保健法第十七、十八条)

(四) 要保護者及び準要保護者から学校の訳置者が徴収しない学校安全会共済掛金相当額について、日本学校安全会に対して国は所要経費の一部を補助する。(学校安全会法第二十条三項、三十五条三項)

(五) なお、特殊教育諸学校への就学は多額の費用を要するので、父兄負担の軽減を図るため、都道府県は、その就学に必要な経費を支給し、それに対して国は二分の一を負担する。費目としては、教科用図書購入費、学校給食費、交通費(通学、帰省に要するもの)、寄宿舎居住に伴う経費(寝具購入費、日用品等購入費、食費)、修学旅行費、学用品費がある。(盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律)

 

三 教育扶助との関係

教育扶助とは、生活保護法第六条二項に該当する要保護家庭を保護するための生活扶助等を含めた七種の保護のうちの一つであり、学校教育法二十五条に基づき立法化された就学援助に関する諸法による就学援助費とは区別されるものである。

問題は就学援助費と教育扶助との関係である。両者の間に適当な調整が行われなければ、同一の事由(就学困難)に基づき、双方から給付を受けることになるので、そのため生活保護法第四条二項では「…他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と規定して二重に給付が行われることを避けている。二に列挙した就学援助費に関する諸法は、ここでいう「他の法律」に当たる。したがって、要保護者はこれらの諸法に基づく就学援助費に特有の費目と、教育扶助の費目について給付を受け、準要保護者は就学援助費のすべての費目の給付を受けることができる。もっとも要保護者であっても、教育扶助を受けていないものは、就学援助費のすべての給付を受けることになる。

 

四 その他

要保護及び準要保護の児童生徒の認定は、市町村教育委員会の責務であるが、認定の手続き過程では学校長の責任において該当者を選考し、「要保護及び準要保護児童生徒に係る世帯票」で、市町村教育委員会に意見を具申することになっている。したがって学級担任は、担任している児童生徒の中から該当するものについての資料を整えるため、福祉事務所長や、民生委員と連絡をとることも必要となってくる。

 

 

 


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