教育福島0060号(1981年(S56)04月)-036page

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開館一年をふりかえって

 

船引町図書館長

吉 田 裕 子

 

図書館コ一ナ−

 

図書館コ一ナ−

 

昨年開館した当館も、この五月十六日で満一周年を迎えます。無我夢中で過ぎた一年間を振り返ってみると、またたく間のことのようでもあり、何年も過ぎたような気もします。今日は、この誌上を拝借して、一年間の反省と新しい一年に向かっての決意を述べてみたいと思います。

この一年の間、常に私の脳裏にあったことは、「図書館の運営がこれほど大変なものだったとは」ということでした。独立した一つの「館」をまかされて管理から運営まで切りもりしていくということは、開館前に想像していた以上のものでした。司書の資格を持ってはいても、実績を持たない身の悲しさで、図書館サービスの面からも行政の面からも、もたつきが目立ち、周囲のかたから見ると大変歯がゆい思いをされたことと思います。

一口に図書館サービスとはいっても館内の利用案内から館外貸し出しの手続き、初めて利用する人や見学者への利用案内、PR活動等、頭では理解していても、それらを効率的に実行するとなると大変に難しく、開館後二か月くらいは、毎日毎日が試行錯誤の連続で、われながらよくも無事に切り抜けてこれたものだと妙な感心のしかたをしています。

このような中で、未熟な私たちの図書館運営に対して「あせらず」「着実に」図書館サービスを展開するようにと温かく見守ってくださった周囲のかたや、利用者の皆さんの大きな期待にどれだけ勇気づけられたか計りしれません。開館当初少なかった成人の利用も徐々に増えて、土曜日の午後や日曜日には家族連れの利用者で活気にあふれています。蔵書も一年間で約三千冊の増加をみ、現在一万四千八百冊となりました。最近は、コントロールデスクの近くに設けた「新刊書コーナー」や「予約コーナー」の利用も多く、特に新刊書コーナーへの反応の早さにはこちらが驚かされるほどです。

また、レファレンスの分野については郷土史に関連した問い合わせが非常に多く、限られた資料の中から回答せざるをえないのが現在の最も大きな悩みの種となっており、町教委の町史編さん事業の完成がまちどおしく感じられます。その他に、「夢二ルーム」関係の問い合わせも多く、夢二に対する関心の高さがうかがわれます。

いままで、述べてきましたとおり、船引町図書館はやっとヨチヨチ歩きを始めたばかりで、利用者本位のきめの細かいサービスを提供するまでには至っていないのが現状です。しかし、二年目を迎える今年度からは、図書館のサービスをより積極的に展開しようという趣旨のもとに、二つの行政区をモデルケースとして「巡回文庫」を実施する計画があります。これは、県内で最も広い面積と人口の多さを誇るこの町の実態に即し、交通や仕事の関係でなかなか図書館を利用できない人や図書館を利用したことのない人にも図書館を利用してもらい、将来は本館でのサービスと移動図書館の二つのサービス網を確立したいと思っています。そのために、今年度は予算的な措置として、本館整備費とは別に巡回文庫整備費のわくを設けました。これをフルに活用して、できるだけ早い時期に、町内全域を巡回できるようがんばりたいと思います。常に利用者の側に立った図書館のサービスに徹し、町民の生活の中に溶け込んだ図書館つくりが私たちの夢です。小規模でも、中味の濃いサービスを展開するために、職員の力を結集していきたいと思っています。

一日も早く、郡内に、県内各地に町立図書館が続々と誕生し、県内に図書館ネットワークが確立できることを心から期待しております。

 

−資料−

竣  工

一九八○年二月二七日

開館

同年五月一六日

延床面積

八九八平方米

所在地

船引町大字船引字扇田

〇二四七八一二−一〇〇一

本県で二番目に誕生した本格的な図書館。鉄筋コンクリート二階、一部三階建ての明るい雰囲気である。館内は、一階が児童、開架閲覧室、ロビー等、二階が読書室、会議室等があり、この町には由縁の深い竹久夢二の作品を常時展示してある「夢二ルーム」などもある。

 

 

 


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