教育福島0061号(1981年(S56)06月)-047page
県指定重要文化財(工芸品)
田出宇賀神社御正体
銅造薬師如来懸仏 1面
銅造千手観音懸仏 1面
鉄造阿弥陀如来懸仏 1面
附懸仏 4面
田出宇賀神社には鎌倉末期から南北朝期にかけての御正体が七面ある。
「御正体」とは神の本体という意味で、神仏習合の思想である本地垂遊説に基づいてつくられたものである。御正体の中で、神の本地となる仏を鏡板上に肉彫りであらわしているものを懸仏という。
同社の七面の御正体のうち「銅像薬師如来懸仏」は鏡板上に立体的丸彫りの薬師如来の坐像と蓮台を貼りつけている。鏡板の両肩には獅噛座を具え、宝珠形の鏡台をつける。鏡板裏には、「康永三甲申四月十一日」(一三三四)の銘があり、南北朝時代の基準作例として仏教工芸史上貴重である。
「銅造千手観音懸仏」も年号はないが、南北朝時代の特徴をよく示している。
「鉄造阿弥陀如来懸仏」は、径三十四センチメートルの比較的大きな懸仏で、台座に立つ阿弥陀如来立像が鋳出されており、当時流行の善光寺式阿弥陀如来の形式をもっている。製作年代は鎌倉末期を下らないと見られ、大粒の螺髪、比較的大きな鼻、豊かな頬、複雑な衣文など、写実的表現は地方作とは思えないほどの優作である。
▲銅造薬師如来懸仏
▼鉄造阿弥陀如来懸仏
所在地 南会津郡田島町大字田島字宮本
所有者 田出宇賀神社