教育福島0064号(1981年(S56)09月)-014page

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に少しずつではあるが変容が見られるはずである。本校では、これらの様子を的確にとらえ再相談を進めるようにしている。また、相談を実施した後、生徒に、相談内容と結果を相談カードに記入させ、提出させることにより、進路意識の一端を知るよう心がけている。

 

(四) 進路情報部会

 

進路指導における主要な要件として自己理解と並んで、進路の世界の理解が重要である。進路の世界と遊離した自己理解では、観念的な自己理解であり、進路指導の目標である個々の生徒の職業的発達を促すことはできない。そこで進路情報を計画的に収集し、提供することにより、職業的視野の拡大をはかり、生徒の進路選択に役立てている。

進路情報室の設置

収集した進路情報を保管し、その中から特に強調したい情報を計画に従って掲示する場として、また生徒が進路学習に際して、事前調査・事後調査の場として、進路情報を利用した進路相談の場として、進路情報室を設置した。

情報室に収集した進路情報は、ア)生徒の進路希望に関するものイ)職業・産業の種類に関するものウ)職業観・産業観に関するものエ)上級学校の種類・内容に関するものオ)進学観・勉学観に関するものなどである。

 

(五) 保護者研修部会

 

進路指導は、家庭の協力なしでは、十分な成果を上げることは困難である。三か年を通して受けてきた進路の学習が、進路の決定の時に、親の無理解によって一瞬のうちに崩壊してしまう例もある。中学生にとって、進路選択に対する家族の考え方は、大きな役割りを果たしており、家庭を切り離して、生徒の進路指導を考えることはできない。

そこで、生徒に大きな影響を与えている保護者に、正しい進路への認識、理解を高めることをねらいとして、研究を進めている。

1) 保護者研修講座の実施

保護者に対して、進路指導に対する関心を高めたり、意識の向上を図るために、学年PTAの機会を利用して、計画的に研修講座を実施している。

研修講座の内容は次の通りである。

一学年「子どもの進路と親のあり方」「子どもの個性の理解と伸長」

二学年「望ましい進路希望とその育て方」「進路のコースと希望の確かめ」

三学年「子どもの個性と進路」「進路選択のための各種情報」「子どもの進路の選ばぜ方」

2) 保護者との相談・三者相談による個別化

研修講座や各種情報により、保護者の進路への関心を高め、それを更に個別化を図る機会として、保護者との相談や三者相談を計画的に実施している。相談の際には、学習成績のみにかたよらないように留意し、親の子供に対する期待や子供の能力・適性等に関すること、生徒の学校生活・家庭生活に関すること、生徒の進路の適否に関すること、などを意図的にとりあげるようにしている。

 

(六) 検査・調査・統計部会

 

生徒の諸特性を客観的に把握するには、各種検査は非常に参考になると、考えられる。ただこれらの検査や調査には、効用と限界があるので、本校では、各検査、調査ごとに、実施の時期方法、進路指導への活用のねらい、留意点を設定し、効果的に進路相談等に活用している。実施している主な検査は次の通りである。性格検査・知能検査・新学習適応性検査・進路適性検査職業適性検査。

調査の中で本校は、卒業生に対して高校入学後の初年度をとらえ、その後も引き続きより適応し、自己実現を図ろうと努力するよう追指導するとともに、その結果を、中学校での進路指導の改善に、役立てるために、進路に関する調査を実施している。

 

五 反省と今後の課題

 

十分な進路指導の基盤がなかった本校が、以上述べてきたような、実践研究を進めてきたが、その結果、教師に望ましい進路指導のあり方の意識が高まり、生徒も進路への関心が高まってきたようである。しかし一人一人の生徒を観察した時に、どれだけ自分自身の能力・適性等を把握し、自主的な進路選択の能力が育ったか、という疑問が残る。各実践研究部会の課題をもとに、研究を進め、この問題を解決して行きたい。

・今後の課題

(一)各教科・学校行事等と進路との関連を図ること

(二)学級指導における事後指導の充実

(三)進路相談の技術の向上と時間の確保

(四)進路情報室の活用と進路情報の保護者への提供の工夫

(五)魅力ある保護者研修講座の実施

(六)生徒の職業的発達の評価

 

 

真剣な話し合い

真剣な話し合い

 

 

 


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