教育福島0064号(1981年(S56)09月)-034page
わたしの研究実践
原理を理解させるための教材の工夫
福島県立小名浜水産高等学校教諭
越前菊三
一 研究の趣旨
漁船の諸設備を使いこなすことは、安全運航を責務とする乗組員の基本技術である。昨今のようにすべての機器類が電化されてくると、操作が簡単であるところがら実技だけで十分な技術者であるかのような錯覚を起こし、難解と思われる基礎理論や原理の学習を回避する傾向がみられる。
後継者養成を目的とする水産教育では、このような産業界の危ぐを払底して、真の運航従事者を育成するための教育内容に視点をおかなければならない。一方生徒の実態は、既習知識の不足に加えて数式による論理的思考力に欠けているため、原理の学習には特に抵抗があり、当然主体性のない授業になりやすい。
そこで指導法の改善策として、理論あるいは原理の解説に不可欠な数式やグラフを学習者の反応しやすい感覚的な素材に置き換え、合理的な授業展開を図ろうとしてOHPの活用を工夫し実践してきた。
二 研究実践の概要
視聴覚教材の活用についてはすでに各教科で研究されてきているが、個々の学習場面に最も効果的な教材となると一長一短がある。以下原理の単純化実験実習の補強等に優れた特性を持つOHPを活用して、漁船の重要設備である同期発電機及び誘導電動機の原理の解説を行った実践例を述べる。
(一) TPの自作設計
1) 同期発電機の原理(TP1参照)
ア 発電機の回転により三相交流起電力が発生する。
イ 起電力の周波数を決定する界磁極数及び回転速度の関係。
ウ 電機子反作用の発生原因(発展)の学習に活用できるTPを製作した。
・TPシートに円形わくと百二十度間隔の巻線A、B、Cを表示して発電機の固定子とする。
・透明板を界磁極の形状に切り、磁極端に磁力線の方向を標示し回転できるように中心をリベットで止める。
・四極界磁Fを別に作り、二極界磁のリベットをはずして差し換えることができるようにする。
2) 誘導電動機の回転原理(TP2参照)
ア 三相電流により固定子に回転磁界が生ずる。
イ 回転磁界によるトルクの発生。
ウ すべりとトルクとの関係。
エ 逆転法の原理。
オ 速度制御の方式(発展)
を理解させるためのTPを製作した。
・TPシートに円形の固定子と三相巻線A、B、Cを配置する。
・回転子Rは透明板で円形に作り、導体を配列して、固定子の中心部で回転できるようにする。
・別のクリアシートに磁力線を点線で表示し(図省略)固定子に生ずる磁界を表現できるように、TP2に重ね合わせて使用する。
(二) TP活用のプログラム
主題 同期発電機の原理(TP略)
指導目標 同期発電機における三相交流起電力の発生原理及び定格速度と周波数との関係を理解させ、実験を通して確かめさせる。
各相ごとの発生起電力の大きさと方向を考えさせる
・界磁をはずしたTP1を投映させる