教育福島0064号(1981年(S56)09月)-054page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

ふるさと探訪

県指定重要文化財(彫刻)

木造宝冠釈迦如来坐像一躯

像高四三・二センチメートル

ヒノ木材、寄木造り、玉眼、彩色の小型像である。美しく三段に結い上げた宝髻には、金属性の宝冠、瓔路をつける。面部は卵形で眉を寄せ、目を吊り上げ、生々しい人間的な表現をとる。耳朶はわりあい太く張りがある。

なで肩、猫背で腹帯をつけるなど、後期宋朝様式の影響を歴然と残す。おそらく護真寺開山の観応二年(一三五一)前後(南北朝時代)の造顕であろう。ことに特徴的なのは、両袖、裾先を長く垂らす垂下様式になっていること、衣ひだには、菊花、唐草、鳳凰等の胡粉を盛り上げて作った模様がついており、装飾性が強いことである。鎌倉からの移入であることは明らかである。

なお、護真寺は、臨済宗円覚寺派に属し、須賀川の普応寺末である。したがって、寺伝では、本像を法界大日如来と称しているようであるが、当時、禅宗が華厳哲学の影響を強く受けていたことを勘案し、華厳経の教主毘盧舎那仏、すなわち「華厳の釈迦」、(宝冠釈迦)と解した方が妥当である。

この種の仏像は、中通りには見当たらなく、その意味でも貴重である。

所在地 岩瀬郡長沼町大字横田字北の後 所有者 護真寺

所在地 岩瀬郡長沼町大字横田字北の後 所有者 護真寺


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。