教育福島0065号(1981年(S56)10月)-008page

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高等学校の学習指導

 

特集

 

はじめに

 

今月号の特集「学習指導の充実−高等学校の学習指導」は、国語、数学、理科、商業、保健体育、音楽各教科の実践例を紹介します。執筆者及び実践例は、次のとおりです。

国語

生徒の質問を課題化する試み

−「詩人の生涯」の授業−

福島県立田村高等学校 教諭 勝間田 敏男

数学

成功感を大切にした学習指導法

福島県立喜多方工業高等学校 教諭 山田 弘臣

理科

理科におけるわかる授業の実践

福島県立須賀川高等学校 教諭 佐久間 房次

商業

習熟度別学習を行って

福島県立田村高等学校 教諭中 野益 雄

保健体育

保健学習の「移行措置」を実施して

福島県立磐城女子高等学校 教諭 加藤籌失

音楽

音楽=における自由演奏の試み

−創造性と自主性を育てる−

福島県立安積高等学校 教諭 佐々木 文子

 

国語

 

一 実践の趣旨

 

本校で、主として現代国語に課題学習を取り入れて、五年になる。その間生徒も教師も移り、教育的諸条件も変わったが、次のことだけは成果といえると思っている。

○考えさせる授業が定着したこと

○生徒全員が授業に参加するようになったこと

だが、まだまだ教師側の工夫の余地は残されていると思うし、生徒の言語活動も活発だとは言えない。私たちは

○考えて発表する授業

○説明や意見の書ける授業

○集団読みの楽しい授業を最低限実現させたいと望んでいる。

そこで、第三学年三クラスにおいて小説「詩人の生涯」を教材に、生徒の質問を課題化する授業を試みた。すなわち、あくまでも生徒の質問を主体に授業を進めるが、一問一答の安易さを避け、質問を生徒全員が考える課題とする学習である。勿論、生の質問がそのまま課題とならない場合も多い。珍問愚問も出る。どれをどう課題とするかを生徒と一緒に考えることにした。この方法では、授業を成り立たせるために、生徒の発問、話し合い、解答が不可欠となる。もし成功すれば、先の三目標にいくらかでも迫れるのではないか。これが、実践に入る前の仮説であった。

 

二 実践内容

 

(一)対象本校三学年三クラス

(二)教材「詩人の生涯」安部公房

この小説は、昭和二十六年に発表された、シュールレアリズムの手法による寓意小説である。多様なイメージが喚起される作品だけに、今回の授業方法にふさわしいと考える。なお、昭和三十四年朝日放送で放映された同名の台本がある。

(三)学習目標

1)表現の特異性を味わい、小説の方法への理解と関心を深める。

2)寓話のおもしろさを味わい、作品の主題を把握する。

3)主題の現代性、社会性について考える。

(四)指導上留意したこと

授業に入る前に、菊地和章教諭が指導するクラスの第一次感想文を読ませてもらった。すると、この作品を理解しているもの二〇%弱、他はお手上げの様子だった。そこで、後者を分析してみると次のことがわかった。

1)象徴化されたものを日常的概念で理解しようとしている。

例…老婆の正体は羊かなと考えられた。

2)非現実的事柄を現実にあてはめて解釈しようとしている。

 

 

 


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