教育福島0065号(1981年(S56)10月)-009page
例…消えてしまったということはどういうことなのですか。…どうして彼だけが死んでしまったのですか。
3)不注意な読み誤りをしている。そして、これらが妨げとなって、
4)耳なれない擬音が多くわからない。
5)比楡が多くわからない。
6)非現実的なことが多くわからない。という感想が出る。これに、
7)むずかしい用語が多くわからない。
といういつもの悩みが加われば
8)主題がわからない、のは当然である。
そこで、右の諸点、特に1)2)は寓意小説を読む場合陥りがちな混乱と思われるので、課題化の際配慮した。
(五)指導過程
読解と鑑賞 十二時間
感想文 放送台本による補足感想文
家庭学習 個別指導
(六)課題例
生徒の質問による課題であるから、クラスにより多少異なるが、授業記録(代表者に書かせている)をもとに整理して掲げる。1は課題番号、(1)1)は補助課題派生的課題の番号である。
1三九歳の老婆について考える。
(1)老婆の様子はどう書かれているか。
1)「胃袋のかっこうをした油壷」のような比楡を用いた理由は何か。
(2)老婆の仕事ぶりはどうか。
(3)老婆の気持ちはどう書かれているか。
2)<綿>で<>のはたらきは何か。
2若い老婆の老けた息子を考察する。
(1)息子の立場、様子をまとめてみよ。
3息子と老婆を語る場合の文体を比較し、その他表現について考察する。
4「糸になった脳で考え、糸になった心臓で思う」老婆の心情を考える。
5「そのジャケツを売ってしまっては困るような気がするんだがなあ」と言った息子の心情を考える。
6人々の貧しさについて考える。
(1)「人々はなぜジャケツのことで不平
を言いださないのだろうか」以下、誰のどんな考えか。
(2)人々はなぜ不平を言わないのか。
(3)人は貧しさのために貧しくなるとはどういうことか。
7「外国からやって来たジャケツを着る階級の男たち」の考えについて考察する。
8雪の原因と結果についてまとめる。
9雪の描写を鑑賞する。
(1)降雪の描写を改行ごとに一字ずつ下げて書く効果はなにか。
10外国のジャケツを着た家族の変化をまとめる。
(1)家族の変身に共通することは何か。
(2)「思想的虎紋ジャケッが意味するものはなにか。
(3)智慧者は何のために通行人をひっかけようとしたか。
(4)外国のジャケツを着た家族が自壊した真の原因は何か。
11老婆のジャケツが目覚める過程を考える。
(1)どうして一匹のねずみだけが変わらない生活を続けられたか。
(2)老婆の命はどうなったか。
12この場面の表現の面白さを味わう。
13老婆の赤いジャケツが果たした役割について考える。
(1)ジャケツの行動を促したものは何か。
(2)赤いジャケツは何のために息子のもとに行ったか。
14「突然彼は自分が詩人であることに気づき、うなずいて笑った」について以下のことを考えて説明してみる。
(1)彼が詩人であることを示している文を以下から抜き出せ。
(2)「赤いジャケツの青年は雪の言葉を目で聞いた」を説明せよ。
(3)なぜ貧しい者の言葉は美しく合理的なのか。
(4)なぜ貧しいものの魂だけが結晶しうるのは当然なのか。
(5)青年の気持ちを考えてみよ。
15青年の仕事についてまとめてみる。
(1)「ジャケッジャケッと鳴って降った」で、ジャケッを具体的言葉で言い替えてみよ。
(2)結晶の一つ一つについて…観察をはじめるとはどういうことか。
(3)語りおわった雪が消えていくのはなぜか。
16春の到来を示す文章を味わう。
17甦った貧しい人々の気持ちを考える。
(1)「ジャケッと咳くと…立去って行く」でジャケッを具体的な言葉で言い替えてみよ。
(2)ジャケッを身につけたとは何を表すのか。
18「彼は、その頁の中に消えてしまつた」この文について考える。
(1)彼はどういう人だったか。
(2)詩人の役割は何か。
(3)なぜ消えてしまったか。
19貧しい人々の生活はどう変わったか考える。
(1)庫の持ち主はどうなったか。
20この小説で「ジャケツ」の意味することがらについて考える。
(7)テストの結果
期末テストのうち、課題に関連した問題の正答率を出してみた。(%)
(8)感想文から
授業のまとめとして感想文を課し、学習目標に到達しない作品は、個別指導を加えて書き改めさせた。紙数の都合で一例を抄録する。
「この作品を読んで、作者はかなり遊んで楽しんで書いているなあというのが、私の最初の感想である。そして私もかなり楽しく読むことができた。