教育福島0065号(1981年(S56)10月)-021page
ある。それはそれとして、一人でも多くの仲間で新教材に取り組む姿勢が、必要であろうと感じている昨今である。
音楽
一 はじめに
私が本校へ赴任して早くも七年を過ぎようとしている。前任校にいたころは本校を一種の憧れの目を持って眺めていたが、実際に音楽指導を通して生徒に接してみると、私が考えていた本校のイメージとはかなりの違いがあった。音楽の基礎力の乏しさばかりではなく、その基盤となる音楽に対する意欲や意識、あるいは音楽感までが進学校の悪い面が感じられ、「音楽は大学受験には関係がない…」といった態度が生徒に見られた。
このような生徒たちの音楽に対する意識や態度を変革させることが、本校における音楽指導上の課題であることを痛感した。
この課題を解決するには、なんといっても音楽それ自身の持つ美しさ、楽しさ、創造的に音楽を表現することの喜び等に気づかせ、生徒自らが音楽の本質にせまる豊かな音楽体験ができる指導の手だてをすることが一つの方法と考えた。
「音楽2)」においては、生徒自らの計画による学習プログラムと、それに基づく自由演奏を学習内容に取り入れて実施している。
二 学習指導のねらい
1)「音楽1)」のねらい
ア 音楽全般にわたり、出身中学校の音楽的格差の調整を図りながら、的確な基礎力を身につけるよう努める。
イ 生徒が音楽づくりに参加できるよう、教師中心の授業から生徒の主体性を尊重する指導の工夫に努める。
ウ 音楽の本質にぜまる手だてを基本に、幅広い音楽経験をさせる。
2) 「音楽1)」のねらい(主体的学習と自由演奏について)
ア 「音楽1)」の学習の上に、更に生徒の能力や個性の伸長を図る。
イ 生徒の実態を踏まえて主体的な学習活動ができる場を設定する。
ウ 生徒が自分の実態に即した表現種目(声楽・楽器)の選択や学習計画を設計し、個別及びグループに応じた学習活動が展開できるようにする。
工 成果の発展(自由演奏)と相互鑑賞・評価を通して、生徒の個性の発見に努める。
三 生徒の実態
毎年一年次の後期に、次年度の資料として音楽の学習内容について、生徒の得意・不得意についての実態調査を実施している。
例年の調査でも、表1のような傾向の結果が出ているが、生徒得意の歌唱・器楽を中心に、生徒が自己実現できる表現種目の自由な選択をさせ二年次の学習指導内容に位置つけている。
現二年生の表現種目の自由選択状況は、表2のとおりである。
クラスによって種目の選択に片寄りはあるが、できるだけ生徒の希望を生かして、主体的・創造的に音楽活動ができるようにしている。
四 個別及びグループ学習の実際
1) 授業における自由選択による個別及びグループ学習の位置づけ
週二時間連続授業のなかで、年間二期制の前期は個人を中心とした個別学習とし、個々の生徒の特性を生かした能力の伸長を図っている。
後期はそれぞれ声楽や楽器の編成によるアンサンブルを中心としたグループ学習とし、生徒自ら計画した学習プログラムに基づいて、運営・実践できるようにしている。
年間およそ以上のような過程で実施しているが、広範囲な学習内容であるので、指導者はすべてに精通していないと適切な指導ができない。このことを教師自身の問題として謙虚に受けとめ、奏法の修得や楽譜・レコード等の資料の収集に努めている。
2) 自由選択学習における指導
1) 個人及びグループにおける学習計画についての事前指導
(ア) 個人及びグループのグレードに合った個人計画を立てさせる。
表1 56.1月調べ
表2
連続二時間授業の学習指導過程例