教育福島0070号(1982年(S57)04月)-034page

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グループ研究・福島県立喜多方商業高等学校

 

新学習指導要領の趣旨を生かした「計算事務」の指導

 

事務関係科目研究グループ

 

はじめに

昭和五十七年度から実施される新指導要領では、現行の「計算実務」が「計算事務」に変わることになる。そこでここでは、両科目の目標及び内容等について比較検討を行い「計算事務」の指導上基本的におさえなければならない点について考察してみたい。そして新指導要領の実施を明年度に控え、考察した点を踏まえて現行「計算実務」の指導をどのように展開してきたかにつき若干述べてみたい。

一 「計算実務」から「計算事務」へ

目標について 現行指導要領は三つの目標を示しているが、新指導要領ではこれらを踏まえて一つの目標にまとめている。その特色は、現行指導要領では解説編の中で述べられている「珠算や計算機の操作に習熟させ」るということが、新指導要領では目標の本文に明記されたことである。これは、特に生徒の計算能力の一般的な低下傾向の原因が、主としてこれらの習熟不足にあるという認識によるものである。従って今後指導にあたっては、この習熟をいかにして図っていくか、指導のあり方や時間数の問題を含めて考えていく必要がある。

内容について、現行指導要領で独立の大項目として明記されている「計算機械による計算の方法」が、新指導要領では「珠算、計算機による計算の基礎」という大項目の中にまとめられることになった。しかも、現行指導要領では各所で計算機械を利用させる姿勢を打ち出しているのに対し、新指導要領は、生徒の実態によって省略、または簡略に取り扱ってもよいと説明している。これに対して珠算については、新指導要領はこれを非常に重視しており、「生徒の基礎的な計算能力を充実向上させる」ための手段として珠算による計算の基礎を十分身につけさせることを大きなねらいにしているものと思える。また内容及びその取り扱いからみると、「計算事務」は「計算実務」に比し、思い切った削除あるいは簡略化が行われている。更に指導にあたっては、必要に応じて、習熟度別学級編成について配慮することが適当であるとし、高校入学時において珠算の習熟度の異なる生徒がいるという現実に対し、現実的に対処するように示されている。

二 「計算事務」における珠算学習の意義

計算は商業教育の中でその根幹を占めるものである。あらゆる計算には、処理能力とともにそれを判断する能力も要求されるので、この二つの能力が備わってこそ生きた力となるのである。今次改訂では「計算事務」が、「主として第一学年において広く共通的に履修させる基礎的科目」として位置つけられたが、このことは更に専門の進んだ科目を学習する上で、基礎的な計算能力を身につけることの重要性を明確にしたものである。

計算を行う場合、どういう計算を、どのような用具で、どの程度行うかが問題である。「計算事務」が扱う計算は商業計算であり、今次改訂ではこれを理解させるため珠算を中心にすることを明確にした。今日、電卓の普及などにより、そろばんによる計算(珠算)についていろいろ言われているが、珠算学習の教育的意義はどこにあるかにつき述べてみたい。

そろばんは数についての概念を身につけさせ、計算のしくみを理解することのできる優れた用具である。また、珠算学習により、地道な反復練習の中で、事務処理能力、数値判断能力を自然に身につけることができる。更に、そろばんは日本に古くから伝えられた計算用具であり、実用的な価値とともに文化遺産としても価値がある。

三 「計算事務」指導上の留意点

全珠連の調査によれば、東証一部上場企業のうち、回答を寄せた百十四件中九十一件が珠算技能の必要を認めている。しかも、必要な技能ランクを三級以上としているところは百二十九件中百十七件で、実に九十パーセントの高い割合である。本校の卒業生の進路動向をみると、就職者の中で事務関係に進む者が多く、そろばんを活用する機会は多々あるものと予想される。

ところで本校卒業生の到達度を珠算能力検定からみると、五十六年三月卒業の者の約三十五パーセントが本校商業科の示した最低取得級の三級に到達

 

 

 


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