教育福島0073号(1982年(S57)08月)-039page
もちながら、評価の観点を明らかにする方法について研修する。
「箏の奏法」は、これまでの音楽教育で、ややもすると遠ざけられがちであった我が国の伝統音楽に目を向け、箏の実習をとおし、日本人の音楽観や音感覚に触れようとするものである。と同時に、歴史的背景や音楽的特性をも理解し、実際の指導に役立てるようにする。
(三) 音楽科主任
音楽科における主任としての指導力や技能を高めることを目ざす。また、器楽の取り扱い方、音楽活動をより高めるための楽曲に対する深い理解など実習をとおし幅広く研修を進める。
「リコーダーの奏法と指導」では、正しい奏法を身につけ、美しい音を求め、豊かな音楽表現ができるようにする。ここでは、三年生から取り入れられる「たて笛」について、導入期の指導法を研修する。
「楽曲分析の視点とその方法」は、平易な教材を取り上げ、楽曲分析の方法を学び、作品の構成や形式について研修し、音楽の本質にせまろうとするものである。
これらの内容で行われる小学校音楽講座は、担当教師が豊かな音楽性を身につけることをねらいとして編成されているが、また、それぞれの学校の実状に応じて、一創意工夫を加えながら授業で活用できる指導のあり方についても研修のなかに含まれている。
三 中学校音楽講座
中学校の場合音音楽のより専門的な知識・技能・指導力を高めるため、次のような内容を取り入れている。○第2日 ギターとリコーダーの奏法と指導(桑折町立醸芳中学校・中島賢司、川俣高校・蔵田堯)。箏の奏法(宮城宗家会員・山川玉枝)。第3日中学校音楽の歴史と現状(東京芸術大学・山本文茂)。歌唱指導法(所員・安部哲夫)。第4日 学習指導上の諸問題(義務教育課・吾妻幹廣)。「ギターとリコーダーの奏法と指導」では、グループごとにアンサソーブルを楽しみながら、基礎的な技法について実習し、授業における楽器の効果的な活用法を工夫するとともに、音楽表現法を高めることを目標としている。「箏の奏法」は、この講座に取り入れてから今年で十年目になる。我が国の伝統音楽を授業の中に取り入れ、自国のすぐれた文化に接し、更に新しい文化を創造するため、その素地を培うことを目的としている。
「中学校音楽の歴史と現状」では、現在かかえている中学校音楽指導上の問題点を浮き彫りにし、将来に向かいどのような手だてを持つべきか、歴史を振り返りながら現状を分析し、将来の展望までをも講義していただく。
なお、中学校においても小学校と同様に、「歌唱指導法」「音楽表現法」の実習を組み入れているが、ここでは声楽の基礎理論を踏まえながら、児童生徒の発達段階に伴い好ましい歌唱指導のあり方について研修する。
四 高等学校音楽講座
この講座は、小学校・中学校との一貫性を図りながら、更に、専門的な内容に触れ、識見と指導力を高めることをねらいとしている。特に、現在我が国を代表する音楽教育の指導者を講師に迎えて、その造けいの深さに触れることは大きな喜びであり、今後の音楽活動に新しい活力を生みだすことが期待できよう。
次のような内容を取り入れている。
○第2日 現代音楽の教材化とその方法(東京芸術大学・船山隆)。声楽の指導法と発声理論(東京芸術大学畑中良輔)。第3日 尺八(福島工業高校・神津裕一)。音楽教育の動向と展望(桐朋学園大学・三善晃)。第4日学習指導上の諸問題(高等学校教育課・古関斉)。
「現代音楽の動向と教材化」では、新しい音楽の息吹きをどのように感じるべきか、今、世界はどのような音楽を求めているかなど、外国の様子を交えながら、その教材化の方法について講義をしていただく。「声楽の指導法と発声理論」では、個々に発声指導を受けながらアンサンブル上の心構えや発声理論について具体的実習をする。
「音楽教育の現状と展望」は、自分自身の作品を自ら楽曲分析し、音楽の感性と方向性とを講義していただく。三善作品をもとにして、研修者がそれぞれ分析し、感想を述べ合う場面は、大いに興味がわくところであろう。
「尺八」の実習は三年目を迎える。三時間たらずの短時間では、尺八演奏の本質の音色にせまるまでには至らないかも知れないが、その特性の一端を知ることにより、我が国の伝統音楽に親しむ糸口にしたい。
以上、講座の主な内容について紹介をしたが、講師の先生方の適切な指導助言と、研修者の意欲的な研究態度とをもって、実り多い講座になるものと期待している。
中学校講座(箏の奏法)