教育福島0077号(1982年(S57)12月)-005page

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巻頭言

 

スポーツと生徒指導

 

磯上 昌弘

 

磯上 昌弘

 

「校長先生負けてしまいました」と泣きじゃくりながら校長室に入ってきたチームがあった。スポーツに情熱を傾ける者だけが経験するさわやかな感動の涙であろう。私は部活動を奨励している。今の子供に欠けているものはそして大切なものは何か、今更論ずるまでもない。ただ私は汗と泥にまみれながらもそこから貴重なものを体得する青年前期であれと願っている。

今、中学校で一番の悩みは生徒指導の問題であり全国的に深刻化の様相を呈し社会問題となっている。県や市町村教委は生徒指導を重点施策として懸命に努力されているし、教育機関以外でもその立場に応じ対策啓蒙に余念がない。このように行政機関や学校を取り巻く地域の方々の誠意ある営みに、私たち教師は無関心であってはならない。中学校長会としては生徒の非行や問題行動を重くみて各校の実践事例を参考に対応策を講ずるなど早期発見と未然防止に役立てる努力をしている。

社会全体が青少年の健全育成に血眼になつでいるが中体連もその一翼を担っている。そしてその役割の大きさに責任を感ずるのは私一人ではない。

五十四年に文部事務次官より学校教育活動であるとした児童生徒の運動競技についての通達があった。それにより、十七種目の全国大会を実施している。五十九年からは全国を九ブロックに分けて開催する予定である。東北大会の場合も今年度は秋田中心だったが来年度からは各県分担二ないし三種目となることが決定している。

また県全体の立場においては県体協が中心となり、県民の期待に応える競技力向上のため抜本的な施策を講じ、積極的推進のゴーサインが出ている。

今年度の国体では開催県である人口七十万の島根が天皇、皇后杯を獲得している。私はたまたま国体を視察する機会があったが、幼稚園児から老人にいたるまで県民総ぐるみで取り組んでいるという印象を受けた。十三年後に予定される本県の七十年国体もかくありたいものである。

中体連は中学校体育の充実を図り、中学生スポーツの正常な発展を促進することに意義があるが、それを裏付ける次官通達、本県の競技力の向上策など、その背景にあるものは、究極は青少年の健全育成を願うものである。

このような観点に立って考えてみたとき、知育偏重との批判も素直に受けとめ、反省すべきであるし、もっと視野を拡大した上での現状分析が必要とされるのではなかろうか。

今や寝ていて人を起こす時代ではない。授業だけをやればよい時代でもない。校長はじめ各教師の、それぞれの立場におけるリーダーとしてのあり方が、学校運営に重大な影響をもたらすことを肝に銘じたい。

「学校を、そして生徒を良くする最高の鍵は教師が握っている」

(いそがみまさひろ・福島県中学校体育連盟会長/小名浜第一中学校長)

 

 

 


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