教育福島0085号(1983年(S58)10月)-026page
保健体育
生涯スポーツをめざしての選択制授業−生徒達の自主的活動を中心にして−
福島県立安積高等学校
教諭 門沢寛
一 主題設定の理由
スポーツに対する欲求が多様化しているなかで、それぞれのレベルにおいてスポーツを楽しむというスポーツの大衆化・生活化、そして生涯スポーツへと、つながる高等学校における体育は生徒のスポーツに対する嗜好性を考慮し、自分に合ったスポーツを身につけさせることが、必要ではないだろうか。
本校は、ほとんどの生徒が上級学校進学希望者であり、三年生になるとややもすれば運動不足になりがちでもある。
そこで、自分に合ったスポーツを選び、積極的に学習に参加し、生徒達の自主的な活動を生かし、スポーツを自分のものとして考え、自ら計画を立て自ら楽しみ、自ら発展させていくよう生涯スポーツの一環として、三年生に選択制授業を実施する。
選択制授業を三年生に配置したが、そのねらいとしては、次のような点があげられる。
ア この時期に興味の持てるスポーツがあれば、生涯を通じて続けられるものとなり、社会に出てスポーツに親しむ生活をつくることができる。
イ 一・二年生においてのスポーツの基礎を生かして、自分の好きな種目得意な種目が選択できる。
ウ 自分の好きな得意な種目を選択できることにより、受験を控えた三年生が、体育に対する意欲を失わずに積極的に授業に参加し、減少しがちな運動量を維持増進させることができる。
エ 個人の体力や健康度に応じて、選択できる幅があること、また、種目ごとに自主的に運動に取り組む姿勢をつくることなど、三年生の特性に合わせることができる。
二 選択制授業の実際
(一) 選択種目の設定、施設
できるだけ生徒の希望をとり入れて設定したいが、施設設備、用具並びに指導者、安全管理の面などを考慮し、また、スポーツの生活化、継続性を考え、日常生活でも、社会へ出ても、実践し易い種目として、次のネット型の四種目を設定する。
バレーボール−体育館内 一面
バドミントン−体育館内 二面
卓球−卓球場 四台
軟式庭球−仮設コート二面
(二) 選択の方法、グループの編成、指導者
クラスごとに原則的には、生徒の希望により、四種目のうちから一種目選択させるが、多少人数の関係から調整する場合もある。
授業は、クラス(ホームルーム)単位で実施し、指導者は担当教師一名である。
そして、グループは、同じ種目を選択した生徒達でつくり、グループ内にリーダー、サブリーダー、用具係などの役割を決め、自主的活動に備える。各グループの人数は、10〜12名程度とする。
(三) 授業の展開
1)学習のねらい
ア それぞれの運動種目の特性を理解し、ゲームに必要な技術を身につける。
イ 各人の役割を定めたり、ポジションを決め、各人がそれぞれの責任を果たしながら、自主的に学習する態度やマナーを身につける。
ウ ゲームに必要な基本的技能や応用的技能を練習し、将来にわたって生涯スポーツとして、その運動を楽しむことができる技能を身につける。
エ 正しいルールや審判法を理解し、お互いに授業や校内大会で公平な審判ができるようにする。
オ 身体運動の場における安全・健康管理の態度や習慣を身につける。
2) 学習計画(指導時数−二一時間)
1−オリエンテーション
2−調整練習
3−グルーピソグ、役割分担、計画の立案
4〜16−基本技能・応用技能の練習、簡易ゲーム・正規のゲーム、ルールの検討、審判法
17〜21−まとめのゲーム、審判法
オリエンテーション一の時間に、選択制授業を進めていく上での授業形態や方法、授業の取り組み方などについて話し合い、生徒達に理解させて、そのあと、人数調整のための時間を設けてグルーピングをし、各グループ毎で役割を決め、生徒達で大筋の練習計画を立て、練習内容を考えさせる。そして、グループ毎に学習内容、学習計画を授業記録簿に記入させて、毎時間チェックさせることによって、学習意欲を喚起させながら、授業を展開していく。今までの授業は、教師が計画し、目標を設定し、「やらせる体育」の授業の展開をしてきたが、今度の選択制の授業は、生徒達が授業記録簿に計画を立て、学習内容・学習目標を確認させ、実行させる、いわゆる生徒達が自主的に楽しく自ら進んで「やる体育」の授業を展開していく。
練習は、グループ毎にリーダーを中心として自主的に行うのであるが、計画立案の段階で、次の点に留意するよう指導する。