教育福島0085号(1983年(S58)10月)-058page
ふるさと探訪
県指定重要文化財(彫刻)
木造千手観音立像一◆
ヒノキ材の一木彫成。檀像で毛髪に墨、口唇に朱を入れるのみである。仕上げ段階で襟首から裾まで材を二つ割りにし、十分内到りを施して、ハギ合せる割はぎ方法をとる。頭部は三道下でノミを入れてはぐ。面貌はやや面長で引締まり、細い彫眼で耳朶はよく張り、巻毛を付ける。
千手は背面左右に、肩下りに縦長半月形の板を貼り、十九胃ずつ付け、合掌手、宝鉢手は本体にはぎ合せる。ただ大分形式化し、持物はすべて失われている。衣文の彫刻は深く、腰裳を二重に纏めるが、腕には作りつけの胃釧・腕釧等なく、また下肢をおおう条吊もない。木割、構造、腰裳等のまとめは鎌倉時代造顕の特徴を示す。
もっと厳密にいえば、額の木製の白毫は、両眉の稜線を結ぶ線と正中線の交点にあるべきだが、上過ぎ、また背面の彫刻は簡略化するなど地方作であることは明らかである。面貌・肉身・衣文の木目が極めて鮮やかで、鎌倉時代中期を下らない檀像として貴重である。なお化仏は清涼寺式の頂上面・正面・後方の一面のみ元のもので、ほかは後補である。
所在者 郡山市湖南町福良字寺ノ前六二八四番地
所有者 千手院
像高 百七十三センチメートル