教育福島0086号(1983年(S58)11月)-040page

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福島民報社取締役編集局長 星 一男

 

福島民報社取締役編集局長 星 一男

 

ここに紹介する文章は、九月十・三・十四日、福島市飯坂町で開催された昭和五十八年度東北地区広報研究協議会での講演内容の要旨です。

 

私たちの毎日の仕事、特に今日お集まりの市町村教育委員会等で広報活動をしている方々においては、仕事がいつも現実の後追いであってはいけないと思います。たえず先を見直すこと、そのための現状認識をたえず行っていること一即ち、日本の政治的、経済的、国際的立場に関する現況の認識を深めておくことが、どんな仕事にも必要不可欠なことになってきているわけであります。

いいかえますと、目の前の事象にばかり拘泥していると、将来の社会、これは何も世界のことばかりでなく地域社会といった狭い範囲での未来の設計がおろそかになります。ですから、日本の歴史的、あるいは国際的関係について、たえず目を開いておく必要があると思うわけです。

では、日本の戦後三十八年間という、平和で経済的繁栄の裏にある現実を考えてみたいと思います。なぜそうするのかといいますと、日本の現在は戦後の政治、経済、社会的営みの上にのっているわけでありまして、その歴史を知ることが、現状の認識につながるわけです。まず第一に考えられることは、我が国は「資源小国」というアキレス腱をもっているということです。その端的な例が、一九七三年の石油危機という現象でした。これはまさに日本にとって経済発展の歩みを鈍化させるというショツクを与え、日本が持つ先天性心臓弁膜症というべき現実を明確にさせました。この点こそ、日本がもっている最大の弱点であり、世界の国々と友好協力の輪を強めていかなければならない理由であるわけです。

第二は、第一にあげた現実を踏まえたうえでの「経済大国日本」という世界的肩書きが付けられたことです。GNPの驚異的成長にみられるように、日本の発展は世界に類を見ないものでした。その結果として日本は、豊かさ、自由度、治安度において世界一といわれております。これは私自身、諸外国に出掛けたりした時の観察からも、たしかにいえることです。アメリカでは一日に指名手配される犯罪者は二十万人ともいわれ、ニューヨークでは「人体に被害がなければ強盗などの二〇番はしないでくれ」と警察がいうほどです。パリのモンマルトルでも然りです。世界の観光地といわれながらも、その治安度はあまり良いとはいえません。例えば、公衆電話をかける時でも、自分のバックや荷物を足の間にはさめておくだけでは不十分で荷物に足をのせがっちりとおさえておかないと持っていかれてしまうというほどです。海外特派員の感想も、日本はピカピカし、ヨーロッパはくすんでおり、アメリカは荒んでいる、といっています。このように日本は世界の国々と比して、たしかに平和と繁栄をおう歌しているかのようです。

しかし、下手をすると日本は、世界の「孤児」になりかねない危険があります。その経済的理由としては、貿易摩擦があります。これは日本と世界、特にアメリカとの貿易の量の不均衡の問題です。例えば、日本の自動車のアメリカヘの輸出がアメリカの自動車産業を圧迫し、アメリカの労働者のレイオフの原因ともなりました。アメリカは、日本のために公海の自由を確保している。日本が中東から石油を買い付けてくるタソカーの安全を守るためにアメリカの艦隊が公海上での軍事的安定をはかり、その軍事費の負担は相当なものである。あるいは、日本はアメリカへ売る一方で、アメリカが日本へ売りた

 

 

 


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