教育福島0086号(1983年(S58)11月)-041page

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昭和58年度東北地区広報研究協議会講演

 

「どこへ行く日本」

 

いというものは買おうとしない。このようにアメリカが日本の金もうけを手助けしているのに、日本はアメリカとの貿易の自由化、農産物の自由化や、自動車の輸出規制をぜずに経済発展を続けている、と考えているわけです。ここに経済の問題が防衛の問題へと拡大し、日米安保条約の問題と連結する論理があるわけです。

もう一つは政治的理由として、ソ連、アメリカ、中国との関係が問題となってくるわけです。日本とアメリカの政治的関係は、これは誰が見ても緊密そのものです。貿易摩擦は本気のケンカではありません。ソビエトとは、まだ国際法的には完全な講和条約が成立しているとはいいきれません。しかし、シベリア開発の思惑やチュメニ油田開発等で、日ソ友好を崩したくないというソ連の基本的姿勢があります。日本と中国は、ニクソン訪中いらい接近し、中国との経済協力の友好の絆を強くしたいと考えています。一方、アメリカは対ソ的には世界の軍事的バランスを崩したくないと考えておりますし、対中国的には、ソビエトとの関係をにらんだうえでの友好とか新しい市場をねらっての積極的売りこみといった面をもっております。そして日本とは、アジアの経済大国として全面的バックアップを進め、米日友好を絶対的なものにしたいと考えているわけです。このような日本、中国、ソビエト、アメリカの国際関係の中で、ただ一つ緊張をはらんでいるのが、中ソの関係悪化です。このような国際間の中で、日本が経済的安定を考えるあまり、利益中心の行動やなりふりかまわぬ金もうけ主義をとれば、世界の軍事的、政治的に微妙なバランスの上にのっている日本は、孤立化する危険があるといえます。

そこで日本がやらなければならないことは、海外経済援助のような世界への義務を果たすことです。すでにのべましたように日本の安定は諸外国との関係が安定していることが最大の条件でありますから、世界の情勢を見通す力をつけ、世界の国との友好の絆を強くし、そのために経済大国としての義務を率先して果たすことが不可欠であるわけです。

一方、日本は国内的にも問題がたくさんあります。国がかかえる赤字国債は、まさにサラ金財政であり、この解決は急を要します。また一見忘れがちなことですが、近い将来の大問題として、高齢化社会の問題があります。これは現在の老人問題という目さきのことではなく、二十年後に社会の中堅となる今の青年の問題として若い人に真剣に訴えていく必要があります。この点、現在の青年が、この話をすると笑ってすましているという傾向は心配でなりません。

教育の問題も深刻です。非行問題をいわれていますが、これは先をみきわめることが困難な状況です。大阪で女子中学生が踏切で轢死した事件がありましたが、ここでの問題は、午前〇時五十分という時間に中学生が歩いていたということ、彼女たちが親元を離れてアパート花活をしていたという事実に目を向けたい。そして、まさに平和と繁栄の底にある「現実」をどう理解すればよいかということです。この子たちは、家を出て友人同士でアパートを借りて生活していたわけです。女子中学生二人が家出して一か月もアパートで暮せることが、日本人が求めて来た豊かさ≠セったのでしょうか。親は一体どうしていたのでしょうか。このような親子の関係があり、それが事故や非行に結びついているという現実をどう考えればよいでしょうか。

以上、いろいろとお話ししてまいりましたが、平和の中で日本の社会をたてなおす方策は何かといった、世の中の流れをみきわめて、日々の仕事に本音をだしあう生活なり活動が必要ではないでしょうか。これを本日の話の強調点として、お互いに仕事をしっかりとやっていきたいと思います。

 

 

 


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