教育福島0087号(1983年(S58)12月)-018page
県発掘技術者講習会」は、福島市教育委員会との共催により、二十名の受講者を対象に七日間実施された。今年度はとくに遺物の見方、実測、採拓等の整理作業過程に重点をおいた。福島市教育委員会の柴田俊彰氏による「福島盆地の古墳文化」と慶応義塾大学教授江坂輝弥氏による「大陸文化と日本」の講演も行われた。
(五) 本年度の主な発掘調査
1 本屋敷古墳群(浪江町)
法政大学創立百周年記念特別プロジェクトとして行われている三年計画の発掘調査も最終年次となった。
主墳の前方後円墳一基と、とりまくように築造された方墳一基、円墳二基が調査された。その結果、前方後方墳−方墳−四号円墳−三号円墳の順序で営まれたことが明らかとなり、前方後方墳の四百年前後から三号円墳の五百年前後までの期間の古墳群であることが明らかとなった。
当地方初期古墳群の成立時に南からの影響が認められる点など、重要な指摘がある。副墳品は全体として比校的少量であった。
2 上ノ内遺跡(いわき市)
宅地造成工事に伴う緊急発掘調査として、いわき市教委によって行われた。
各時代の遺構が複合して検出されたが、縄文時代では、中期の土坑、住居跡、埋設土器があり、二地点からは貝塚も検出された。弥生時代では、中期から後期にかけての遺跡、遺物が多い住居跡は九棟、合口土器棺などもある。
特に、土器相内から管五が十二個検出され、底部からは洗骨された成人骨片が確認されている。古墳時代から平安時代にかけての住居跡二十七棟も検出され、さらに中国龍泉窯産と思われる青磁器片、古伊万里焼、相馬焼、勿来焼などの近世陶器片も多く検出された。
3 南原遺跡(会津若松市)
会津若松市大戸地区の古窯跡群を中心とする遺跡群は、現在までに百個所をこえているが、今秋の調査によってさらに増加することが予想される。
開発に伴う緊急調査が必要となり、二基の須恵器窯の発掘が会津若松市教委により実施された。
くわしい内容は今後整理が進んだ段階で明らかになろうが、二基の調査結果だけでも種々の点が判明している。須恵器の器種だけでも次のようなものがある。杯・高台杯・双耳杯・盤・甕・長頭壷・平瓶・横瓶・ミニチュア土器・内面硯・焼台?と実に多彩である。
器底に刻された「佛」「◆神」「◆」などのヘラ書き文字の存在も重要であり、地元の人によって、表採されている鳥形製品や、灰釉陶器の存在も、今後十分その意義を検討する必要があろう。
4 関和久上町遺跡(泉崎村)
五年計画の第三年次の調査が目下行われている。
今年度は、関和神社下の瓦出土地点と関和久瓦窯跡の二地点を発掘地点とし、瓦窯跡は並列した二基を発掘し、すでに細弁蓮華文軒丸瓦や凸面布目瓦などが検出されている。
二基の前後関係の確認や、地磁気調査による未知瓦窯の跡確認なども行われつつあり、今後の成果が期待される。
大切な文化財を後世に伝えよう
一/26・文化財防火デー
わが国には、建造物や美術工芸品などの優れた文化財が数多くあります。これらの文化財の多くは、木・紙・布など、火災により損億を受けやすい材質で作られています。
一月二十六日が「文化財防火デー」とされたのは、昭和二十四年のこの日に、国民的な財産であった法隆寺金堂の壁画が焼損したことと、ちょうど火災の多いシーズンに当たっているためです。
この日を機会に、二度と法隆寺金堂壁画の悲劇を繰り返さないという決意を新たにしたいものです。
南原遺跡(須恵器窩跡)