教育福島0087号(1983年(S58)12月)-037page

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知っておきたい教育法令

教育委員会の職務権限(総務課管理主事・遠藤教之)

 

地方自治法(以下「地自法」という。)一条の二に定める地方公共団体が、抱える教育に関する事務を担任する執行機関は、地方公共団体の長(同一四八条)と、行政委員会の一つとして、長から独立した職務権限を有する教育委員会(同一八○条の五)とである。本稿の主題は、この教育委員会の職務権限についてであるが、もとより広範・多岐に渡るもの故、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)二三条の柱書及び一号の「学校その他の教育機関」の設置について述べるにとどめる。

 

一 職務権限の一般的な定め

 

地教行法二三条柱書の「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務及び法律又はこれに基く政令によりその権限に属する事務で、次の各号に掲げるものを管理し、及び執行する。」の規定は、地方公共団体が処理しなければならない教育に関する事務のうち、次の二四条の長の事務を除き、教育委員会が、公共事務・機関委任事務・その他の行政事務を、管理し執行する権限を有することを明示したものである。

地方公共団体が処理しなければならない教育に関する事務の範囲は、地自法二条4、6項で「市町村のもの及び市町村のできるもの」、「都道府県のもの」と例示的に定め、その事務を管理し執行する権限の内容は、同一四八条で長に属するもの、教育委員会のそれは、同一八○条の八で定め、同一四条で都道府県、市町村の競合を避ける法的措置が講じられている。

以上のことから本規定は、教育委員会の団体事務に関して、一般的に定めたといえ、さらに、その権限は、本条一九号の「前号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること」の包括的な規定により、一八号まで列挙のものにとどまらず、二四条、三二条の所管を除き、教育に関する事務全般にわたるのである。

 

二 学校その他の教育機関の設置

 

広範かつ多岐にわる事務を、教育委員会が、自ら全て遂行するのは、不可能なことである。それ故、各種の教育機関を設け、それぞれの分野での創意工夫と自主性によって、より効果的な教育活動が行われ得るようにしたのが地教行法二三条一号の「教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関することの規定である。

学校その他の教育機関の「設置」は地教行法三〇条の「地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係員職の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる」が定める「設置」とは、その権限において、相違している。

三〇条の「設置」は、二四、二八条地自法二四四条とあいまって、地方公共団体が、法律に基づいて、又は条例によって、学校その他の教育機関を設置することである。

一方、二三条一号のそれは、教育委員会が、地方公共団体の執行機関として、「教育機関としての役務を提供するための通常物的要素と人的要素の形態的要素をととのえ、かつ教育行政の主体が教育機関を設けるという意思表示をする」(逐条解説地教行法、木田宏)ことであり、個々の管理、運営等の処理については、地自法二四四条の二の規定により定められる条例に従い、地教法行三二条の所管を除き、三三条による教育委員会規則で、学校その他の教育機関の、物的管理のみでなく人的管理及び運営管理が行われるのである。

これが、地方公共団体の執行機関としての教育委員会が有する学校その他の教育機関の設置に関する職務権限の内容である。

国の場合は、教育に関する行政事務を遂行する執行機関である文部省が、学校その他の教育機関を自己の附属機関として設置する権限(国家行政組織法八条、文部省設置法五条)を有しているのである。

 

 

 


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