教育福島0087号(1983年(S58)12月)-036page

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第31回 福島県図書館大会から −報告−

 

県立図書館館外奉仕課長

 

県立図書館館外奉仕課長

竹花 孝司

 

三十一回を迎えた福島県図書館大会が十月十三、十四日の両日二本松市文化センターで開かれ、県内の図書館関係者百三十名が参加した。今大会のテーマは「中小図書館、公民館図書室の振興方策をさぐる」である。本県は市立図書館は整備充実が進んできているが町村においては、八十町村のうち、棚倉町立・船引町図書館の実質二館であるのでこのテーマとなった。

一日目の開会式では、石川二本松市長の歓迎のことばに続いて、永年図書館に勤務された田中正子氏をはじめ、十一氏が表彰された。

記念講演は、作新学院女子短期大学助教授小林宏氏の「栃木県における市町村図書館建設促進の歩み」である。

その要旨は次のとおり。栃木県は昭和五十一年当時図書館の設置率が低く全国下から三位であった。それが現在のように急激に設置されるようになった要因として、県公共図書館協会のキャンぺーン、県の新中期総合計画の見直し改訂等をはじめとして、昭和五十二年に県教育委員会内に「栃木県図書館整備調査検討部会」というプロジェクトチームができ、ここで県単補助金を制度化して、市町村図書館の育成を県の使命とすべきこと等を答申し、五十三年度から、県は国庫補助金と同額の図書館建設補助金を予算化した。一方、町村会が昭和五十三、四年度にかけて総額二億円ずつの図書を県下三十七町村に配布し、五十五年度から五十八年度にかけても一億円ずつの図書を配布した。この県の建設補助金の制度化、町村会の図書の配布が市町村図書館建設促進に大きな役割を果たした。

つづいて、会津若松市立会津図書館長門脇平八氏司会のもとに大会と同じテーマで五人のパネラーによるシンポジウムにうつる。

県教育庁社会教育課主幹の前川善明氏は行政の立場から、図書館は建物より人(職員)と資料の方が重要であること、図書館の振興が急速に望めない現在、公民館図書室の役割が重要であること、移動図書館活動は図書館をつくる場合の下ごしらえになること、図書館(室)職員は単に資料の貸し出しだけでなく図書館(室)と地域住民をつなぐ役割をになうべきであること等を提言した。

桑原美代氏は二本松市立図書館利用者の立場から、移動図書館のスタートが振興方策の一貫であること、利用者を入れた図書選定委員制度、新刊コーナー、郷土資料の必要性と、読書グループの相談役になって欲しいこと等を提言した。

常葉町公民館長山上俊朗氏は、公民館図書室の立場から最近の公民館は職員の異動がはげしく、図書に関心のない職員が入ってくる。図書室職員の条件は本好きなことである。ひまもお金もやる気もないと毎年同じような行事を繰り返すだけになる。図書館の方はお話し会や紙芝居などで工夫しているので図書館に学びたいと主張した。

棚倉町立図書館長宗田哲夫氏は、町立図書館の立場から、少ない予算と人員で、どう運営していくかが問題であり、町村の理事者の理解の必要性、議会、教育委員会、社会教育委員等への働きかけの必要性とか教育機関としての位置の重要性等を指摘した。

二日目は、前日のシンポジウムの発言をふまえて大会と同じテーマで四つの分科会を行った。

第一分科会の図書部会では、職員、移動図書館、巡回文庫、貸出文庫、学校との協力、予約等の諸問題について討議された。移動図書館の運営はまんべんなく不満足にやるより集中的におこなう方が効果的である等の意見がだされた。

第二分科会の公民館図書室部会は図書室の運営をめぐって二十三名が発言した。図書館事業を公民館のなかで位置つけることが重要であるとの意見がだされた。

第三分科会の利用者と図書館の部会では、参加者が持っている現状について話し合った。大人をひきつけるには子供の本から入っていくことが重要であるとの意見がだされた。

第四分科会の図書館協議会委員部会では協議会委員の構成と任務について討議した。

全体会では、大会のあり方についての意見をはじめとし、「図書館関係者が足並みをそろえて、県の図書館のレベルアップを考えていくべきではないか」・「公民館図書室の望ましい基準をつくっていくべきではないか」という二つの重要な意見がだされた。

 

 

 


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