教育福島0088号(1984年(S59)01月)-045page

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知っておきたい教育法令

 

補助教材と著作権

 

(総務課管理蜂遠藤教之)

 

主たる教材として検定・採択・無償制度等により国家的保障を得ている教科用図書(以下「教科書」という。)を除く「教材」と、著作権法上、配慮すべき点につき若干概説する。

一 補助教材と権限の所在

学校教育法(以下「学校法」という。)二一条二項は、一項で使用義務を課している教科書以外の「図書その他の教材」の使用を認めている。補助教材と呼ばれるものがこれであり、学習活動の多様化に対応して教科書以外の多種多様な教材の使用を認めたのである。

補助教材は、教科書が発行されていない教科の教材として教科書に準じて使用するいわゆる準教科書と、これ以外の教材で副読本、学習帳、掛図、録音テープ、映画など数多く存在する。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律三二条は、六号で教科書とともに補助教材の取扱に関する職務権限は教育委員会に属すと定め、更に同三三条の学校等の管理運営の基本的事項について定める教育委員会規則交学校における「教科書以外の教材の使用」については、届出・承認の制にかからしめる定を設けるものとするの規定により、本県では、市町村公立小・中・養護学校管理規則準則一五、一六条及び福島県立学校の管理運営に関する規則一六条で補助教材に関する承認・届出の制について定めを設けている。

両規定は、学校として補助教材を使用するにあたり、補助教材を使用すべきか否か、如何なるものを使用すべきか、教員の選択に基づき、校務をりかさどる校長の最終的な判断で選定し、教育委員会に対して所定の手続の履行を求めたものである。

二 有益適切性

定めにある承認・届出の制は、全ての教材につき、これに服させるものではないが、まず選定する上で、なにを基準とすべきかが問題となる。

これについて定める法令は、学校法二一条二項の「有益適切なもの」以外になく、選定の際、考慮すべき点を文部省の通達にみると、主なものは、

・教科用図書の検定を申請し、審査の結果不合格となったものでないか

・教育基本法、学校法、学習指導要領等の趣旨に合致しているか

・地域住民の経済状況等に照して、父兄の負担が過重になっていないか珍児童生徒の発達段階に即したものか

・政治や宗教上、特定の政党や宗派に偏った不公平な立場のものでないか

・学習の評価を自ら行わず安易に問題帳等で代用したり、採点を外部の第三者に依頼するものではないか

・業者との間で、服務の厳正を失するような金品等の授受がないかなどである。また、届出を要しないとするものは、「純然たる問題集、教員が謄写して与え、公費で賄われて個々の児童生徒の保護者に経済的負担をかけないもの」(「学校管理法規演習」文部省地方課法令研究会)である。

三 著作権に対する配慮

補助教材が著作権法上、問題となるのは、電子コピーなど複写機の一般化に伴い、著作物を複製することにより教材として使用する場合である。

公表された著作物を複製し教材として使用できるのは、著作物が有する社会公共の文化的資産としての性格からくる著作権に対する一定の制限の下で、教育を担任する者は、著作権法三五条で「授業の過程における使用に供することを目的」とする場合は、「必要と認められる限度」において複製することが認められているからである。しかし、著作権は、著作者の一身と分離し得ない著作人格権を有する以上に、無体財産権の一つとして著作権者の収益源となる物権類似の絶対性・排他性を有するものであるから、著作権の侵害が、同一二三条一項の「告訴をまって論ずる」ものといえども、同三五条但書に定める著作物の「種類及び用途」並びに「部数及び態様」に照らし、著作権者の利益を不当に害することがないよう十分な配慮が必要である。

「種類及び用途」は、楽譜や映画等わずかな複製で収益行為を害するもの、学習帳等個々の児童生徒に利用されることを目的とするものの複製は、原則として許されず、「部数及び態様」は、通常の学級の規模を超える部数、文芸作品等の相当部分にわたる複製は、認められないもの(「教育課程の法律常識」菱村幸彦)と解される。

 

 

 


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