教育福島0089号(1984年(S59)02月)-005page

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巻頭言

 

明日にむかって

 

明日にむかって

 

松川昭二

 

何年かぶりの大雪に見舞われ、厳しい日が続いた後で、中空にくっきりと稜線を描く青空に目をやると、ある種のやすらぎを覚える。清清しさをともなったやすらぎは、心の糧となって、豊かさをもたらしてくれる。この厳しさから生まれてくる豊かさを、大切にしたい。

最近、続けて若い先生に会って話をする機会に恵まれた。教材の研究や研修、職員室での話題や子供とのふれあいなど、響きのあることばの端々に、生き生きとした学校生活が想像され、このような先生の指導を受けている子供達は、しあわせだとつくづく思う。それはまた、それぞれが、自分の置かれている立場にあって、希望に燃えて教育活動を実践している証でもある。

教育活動で大切なことの一つは、子供を見る目である。見た目には学習意欲に乏しいと思われる子供でも基本的には、分かりたい、覚えたいという強い願望を持っている。子供一人一人の実態に即して、分かりやすく、順序だてて、それは時間のかかる繰り返しになるかも知れないが、分かるまで指導する過程から、子供達は分かった、覚えた、できたという成功感や充実感、満足感を体得するのであり、それが、喜びと意欲に満ちた楽しい教室づくりに連なってくる。また、やんちゃ坊主と見られる子供ほど賞賛を受けたい、先生に認めてもらいたい、仲間に入れて欲しい等の気持を強く持っている。子供を正しく見る教師の目を養い、その子供なりの良さや特性を発見し、伸ばしてやるために温かい目、厳しい目を子供一人一人に注いでいきたいものだ。子供達の願いは、もっともっとあるだろう。その一つ一つをしっかり受けとめ、認め上手、しかり上手で子供達に生気を与えたいものだ。

本誌の特集は、「学校教育指導の重点」である。その根底に流れているものは個々の発達段階に即応した指導の充実、人間性豊かな児童生徒の育成、個性を生かす豊かな教育活動の展開である。これは児童生徒の持っている多様な能力や適性を十分配慮しながら、教師と子供達との人間的なふれあいを基調とした学校教育に結びつくものであり、このような真の心のふれあいからこそ、二十一世紀を託するに足る人材が育成される。今、複雑で激変する社会環境の中で、学校教育の果たす役割は重要であり、先生がたの努力と熱意に大きな期待が寄せられている。この努力と熱意の向こうには、きっとすばらしい明日が展開されるにちがいない。

閉ざされた雪の結晶を破って、早い蕗の◆が首を出した。厳しさに耐えた緑の淡い色が、とり残された白い雪によく似あう。希望に満ちあふれた春の粧いが、足音をしのばせてすぐそこまでやってきている。

 

(まつかわしょうぞう福島県教育庁県北教育事務次長)

 

 

 


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