教育福島0090号(1984年(S59)04月)-009page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

々な地形をつくり出し、それが化石地形として残されている所もある。それは前時代地形と呼ばれる地形の一つである。霊山の化石岩塊流とか早池峰(岩手県)の岩塊斜面、飯豊山の雪食カール等々、事例は多数ある。飯豊や西吾妻ではワンダーブレッケ(氷性移動岩塊)も見られる。これは径一〜二メートル余りの大岩塊が山の斜面をずりさがり、後方に大岩塊の幅だけの浅い溝を刻み、前面では土砂をまくりあげて、誰の目にも動いたことがはっきりわかる岩塊である(写真参照)。信州の霧ケ峰でははどれだけ動くかを計測している人もある。安達太良山の乳首や篭山のまわりでは、中国の学者が鱗片状草皮被炊(坂炊は階段、植被階状土の一つ)と呼んでいる周氷河地形がみられる。私は若い時にこの山に何度か登ったが、この種の地形には全く気がっかなかった。ここには古い雪窪(雪食カール)もある。一部の地学研究家が爆裂口と見たてたというが、雪窪に違いない。似た地形が非火山の飯豊山その他にもあるからである。

周氷河現象は土の凍上と関りがあるので、その方面の研究報告も手を尽くして集めているが、近年凍土の物理的研究も顕著な進歩を示している。私どもの庭先でも、真冬に雪をはらっておくと、地面がひどく凍上するのが見られる。この凍上が土木工学の上で極めて重要な問題である故、研究が進められてきたのである。私共の疑問はその内の限られた一面で、地表の様子にどうかわわるかという点である。土は普通水を含んでいる。その外有機物や空気も混在している。それが凍ると、氷もこの混在物の内に加わる。というのは土壌水分が全部凍るのではなく、不凍水(不凍結水)が残るからである。この不凍水が大変重要な役目を持つのであるが、ここでは深入りをする余裕がない。土の物理的性質はその混合物個々の平均値できまるわけではない。凍ると混在する個々の物質とは全く相違した挙動をする。たとえば水なら凍るときに体積増がほぼ一割弱である。その後は冷却するほど体積が小さくなる。乾いた土粒も冷却すれば容積が収縮する筈である。それが凍った土、すなわち凍土では、水の補給が充分なら容積が三割増にも五割増にもなるのである。こうして鉄道のレールが持ちあげられもする。土に大小の礫が混入しているとまた複雑な挙動をする。その挙動のメカニズムは専門分野の方々におまかせするきりないが、私どもにとっては地表の状態にどのような変化を与えるかが問題なのである。

奥羽南部では、五百か六百メートル以上の山なら、なんらかの形でこの影響をうけた名残りをみることができるから面白い。こうして私どもは、まわりの景色を見て楽しむ新しい視野が開かれたと考えている。この夏も仲間の人達とともに幼稚園児の疑問を解明するため、山登りをするつもりである。老化の抑制にも役立つと考えて。

 

フィールドワーク中の筆者

フィールドワーク中の筆者

 

提言

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。