教育福島0091号(1984年(S59)06月)-031page

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児童書の選定

 

福島子どもの本をひろめる会

代表 内池 和子

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

県立図書館の浦井洋子さん、岩瀬書店の岩瀬太一さんなどに声を掛けられて、県北地方の子どもの本にかかわっている人達が集ったのは、去る五十五年夏のことでした。「灰谷健次郎さんの講演会を聞きませんか」という主旨でした。集ったのは、日本児童文学者協会福島支部、福島子どもの本勉強会、福島県北地域家庭文庫連絡会、児童図書館研究会などの代表メンバーでした。

常々、作家の肉声に接しての勉強の機会を得たいと希っていた私達でしたので、早速準備会を設立、それをきっかけにして、灰谷氏の講演会だけではなく、これからも年一回の講演会を開催してゆこう、そして自分達の勉強と同時に一般の人達にも、そのような場を提供してゆこう、と相談がまとまり、書き手作家、読み手本勉強会、子どもと本とのつなぎ手、児童図書館研究会文庫、公民館職員など、子どもの本を通して一つの会を作ろうということになりました。こうして生まれたのが、福島子どもの本をひろめる会でした。

 

それまでも、このメンバーは、福島県の図書館を考える会などで、県立図書館設立のための請願運動を行うなど協力を重ねておりましたので、自然に会の骨格が出来上ったようでした。そして、今迄のそれぞれの会の特長を生かしながら勉強を続け、その成果をささやかながら、タウン誌や新聞紙上などに発表してゆこうということになりました。

あれから四年近くなります。当初のメンバーがほとんど変らず、少しづっ内容も充実し、会員相互の理解、信頼も深まり、会としての基礎がしっかりと固まってきたという感じがする近頃です。現在会員四十二名、会友二十九名で、当初の計画通り、年一回の児童文学関係者による講演会、会員対象の小講演と研究会、月二回の定例会、年二回〜三回の会報発行などを続けております。

 

講演会は、今迄六回、回を重ね、講師に灰谷健次郎・福井達雨・岩崎京子・菅生浩・宮川ひろ・佐藤芙和などの諸氏、今年度は九月九日、松谷みよ子氏の講演会を予定しております。小講演会は、佐藤浩氏、樋口淳氏などたった二回と少いのは、つい会員、会友だけではもったいないと公開講演会にしてしまった結果です。今年一月から行っているNHK福島放送局の沖野浩一氏による民話の連続講座も三回までを公開講座といたしました。四月からは会員対象にしております。月二回の定例会は主として、福島中央公民館で行い、その一日は、新刊書の書評選定に費し、一日は基礎的な研究会で、民話講座の他に絵本史、作家研究などに費します。

 

新刊書の選定は、県立図書館、岩瀬書店の図書を借り受け、月三十冊近くを読み、充分に討議をつくし、納得のゆく本を推選図書として発表します。選定基準は、造本は勿論ですが、大人から子どもへ、是非伝えたい知らせたいものを持っている作品、例えば、愛や死、生命の大切さ、人間や自然の諸相など、正しくみつめる目を持っている作品、子どもに本とは楽しい世界を展開してくれるものと信頼させ得るもの、知的なユーモアをもったものなどですが、つまるところ、自分で是非買って置きたい本ということになります。

これらは福島のタウン誌に発表していたのですが、廃刊のため四月から福島民友に変更、毎月写真を添えて紹介することになりました。初めのうち、図書選定は、会員の中でも少々のためらいがあったことは否めませんが、年間三千冊といわれる児童書の汎濫の中で、本屋の店先で、何を選んでよいのか迷っている母親の姿を見るにつけ、おこがましいながら、少々でも児童書の勉強を続けてきた私達が、少しでもお役に立てばと願ってのことなのです。

又売れさえずれば何でもよいという出版社へのいささかの批判もありますが、やはり何よりも、言葉で物を考えてゆく大切さ、自分で選びとってゆくことの訓練、知り、積み重ね、創造へ至るための道は、読書によって得られると強く確信するからでもあります。

 

今、テレビ漬けの子ども達や、少年少女雑誌の問題が云々されています。問題を充分に考えると共に、私達は、児童書のすぐれた世界、こんなに素晴らしい世界を知らせ、読書の喜びを教えたい、伝えたい願いでいっぱいです。今後も会員一同誠実に仕事を積み重ねてゆきたいと思っております。

 

 

 


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