教育福島0093号(1984年(S59)08月)-013page
童生徒がどこまででき、どこでつまずいているかを見い出す。
エ つまづきの原因を探り、治療指導の徹底を図る。
オ 反復の機会を授業の終末に、更に授業後の早い時期に行う。この場合は、正確に、速く、系統的に、精神を集中して行わないと効果は少ない。
生活体験や学習体験など、実物を通した学習をより多くとり入れ、学習の定着を図り、「わかった」が「できた」まで高める努力が必要である。
(三) 評価を生かす授業
評価結果を児童生徒の学習や授業の改善に生かすことが、評価の大きな目的である。評価を授業改善に生かす研究は年々盛んになってきているが、児童生徒個々に生かす評価は、更に研究を深める必要がある。日々の評価活動では、次の事項の点検が重要である。
ア 授業途中での評価では、学習のつまずきや未習得事項に、どこまで指導の手だてを講じているか。
イ 自己評価は、自己の理解度やつまずきを知り、主体的に学習するためのものになっているか。教師に提出するためのものとなっていないか。
ウ 相互評価は、長所・短所両面から見る訓練がなされ、納得したものは受け入れる態勢をつくっているか。
エ 総括的評価の結果、未到達の児童生徒の追指導は実施しているか。
オ 目標に合致した観点別評価がなされているか。安易に市販テストが使用されていないか。
カ 情意面の評価資料を集め、児童生徒に生かす手だてを講じているか。
キ ノート・感想文、チェックリスト等による評価を児童生徒の学習に生かしているか。
四、道徳教育の充実
今日、児童生徒の問題行動が大きな社会問題となっていることから、児童生徒の日常生活や行動と深いかかわりあいをもつ道徳教育が重要視されている。各学校の道徳教育においては、児童生徒の発達段階や特性、学校や地域の実態に応じ、学校の全教育活動を通して適切な指導を行い、次の点に配慮して一層の充実を図っていくことが大切である。
(一) 道徳教育実践上の課題
ア 学校における道徳教育が自校の教育目標の具現をめざし、学校の全教育活動を通して行われるために、各学校では全教師が児童生徒や学校、地域の実態を的確にとらえて、道徳教育上の問題点を明らかにし、その改善に努める。
イ 各学校における道徳教育の全体計画を学校の教育目標の具現の観点に立って見直し、学校経営の中に明確に位置づけるよう努める。
ウ 各学校において道徳教育を進めるに当たっては、教師と児童生徒・児童生徒相互の人間関係を深めるとともに、家庭や地域社会との連携を図りながら日常生活の基本的行動様式をはじめとする道徳的実践の指導の徹底に努める。
エ 道徳の時間の年間指導計画が学校の全教師の共通理解と協力のもとに作成され、学校の道徳教育や各学年別の指導の重点がそれぞれ明確にされるように努める。
オ 児童生徒の発達段階に即して、計画的・発展的な指導ができるように指導内容を検討し、特に必要とされる内容については重点的に取り上げるように努める。
カ 道徳の時間の指導の充実を図るため、毎時のねらいとする道徳的価値を明確にし、内面的な自覚を深めるよう児童生徒・資料、教師の活動とを適切に関連づけた指導過程を構成するように努める。
(二) 道徳的実践と道徳的実践力について
学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育においては、児童生徒の行動についての直接的な指導が重要な意味を持つものであり、広い側面から道徳的実践そのものの指導が行われなければならない。
すなわち、道徳的実践は人間がよりよく生きようとする努力の結果として具体的な生活場面に即して、随時随所において指導が行われるものである。
これに対して、道徳の時間においては、道徳的実践力の育成をめざして指導が行われ、そこでは、児童生徒が道徳的価値を自覚し、望ましい行為ができるようになるための内面的資質が培われるのである。このようにして、道徳の時間において行われるのが道徳的実践力であり、それは道徳的判断力と道徳的心情、道徳的態度及び実践意欲を包括するものである。
道徳的実践と道徳的実践力との関係については次のようにとらえたい。
道徳的実践力は、一人ひとりの児童生徒の内面に培われる道徳性であり、それは道徳的実践を支える力となるものである。この道徳的実践力に、児童生徒の具体的な生活場面に即して指導される習慣を含めたものが道徳的実践である。
したがって、道徳の時間の指導において児童生徒の道徳的価値に対する意識が高められ、それが主体的に自覚されたときはじめて道徳的実践が可能になるといえる。このことは、道徳的実践力が道徳的実践を可能にする内面的資質であるといわれる理由である。
(三) 道徳的実践力を培う指導
ア 道徳教育の全体計画における道徳