教育福島0093号(1984年(S59)08月)-044page
知っておきたい教育法令
心身障害児の就学義務と事務手続き
一、就学の義務
わが国の憲法第二六条は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」と定めている。これを受けて、学校教育法では就学の義務に関し、次のように規定している。
保護者は、その保護する子女の満六歳に達した日の翌日以後の最初の学年から満一五歳に達した日の属する学年の終りまでの九年間、これを小学校及び中学校、または盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部及び中学部に就学させる義務を負う(第二二条、第三九条)。
これに基づいて、心身に障害を持つ児童・生徒のうち障害の程度が学校教育法施行令(以下施行令という)第二二条の二に定める程度の者は、それぞれ盲学校・聾学校・または精神薄弱、肢体不自由若しくは病弱の養護学校において教育を受ける義務を負い、それ以外の者は、小学校及び中学校への就学義務を負うことになっている。
二、就学事務手続き
心身に障害を持つ児童・生徒を盲・聾・養護学校に就学させる場合の手続きは、入学はもち論のこと転退学等についても、通常の小学校及び中学校における場合とは多少異なっている。
ここでは、新学齢児が盲・聾・養護学校に就学する際の手順と内容を例にとって述べることにする。
1)学齢簿の作成
市町村教育委員会は、毎年一〇月一日現在で一〇月末日までに、その市町村に住所のある新学齢児について、予め学齢簿を作成しなければならない(施行令第二条、施行規則第三一条)。
2)就学時の健康診断
市町村教育委員会は、学齢簿作成後一一月末日までに、新学齢児の健康診断を行わなければならない(学校保健法施行令第一条)。
ここまでは、小学校に就学する場合と全く同じ手順である。これより以下心身に障害がある児童については、市町村教育委員会が心身障害児就学指導審議会に諮問し、心身の障害の程度等について適切な判断を仰ぐこととなる。
3)盲者等の通知
市町村教育委員会は、盲・聾・養護学校への就学が適当であると判断された新学齢児について、その氏名及び盲者等である旨を、一二月末日までに都道府県教育委員会に通知するとともに学齢簿謄本を送付しなければならない(施行令第一一条)。
4)入学期日等の通知と学校指定
都道府県教育委員会は、一月末日までに、新学齢児の保護者に対し、就学させるべき盲・聾・養護学校を指定し、その入学期日を通知しなければならない(施行令第一四条)。
また、都道府県教育委員会は、これと同時に、その児童を就学させる盲学校・聾学校または養護学校の校長及び住所の存在する市町村教育委員会に対しても、同様の通知をしなければならない(施行令第一五条)。
以上が新学齢児の就学手続きの要点であるが、これら一連の流れを図示すると別表のようになる。
〈別表〉新学齢児の就学手順
(擁護教育課管理主事・高城 俊春)
三、おわりに
新学齢児の就学例からもわかるように、心身障害児の就学指導にはいくつかの段階がある。適正な就学を図るためには、それぞれ各段階で係わりを持つ人々の、その役割についての十分な自覚と理解が何よりも必要である。